雪かき車

雪かき車：冬の鉄路を守る特殊車両

雪かき車は、積雪時に線路の除雪を行うための事業用車両です。鉄道車両の分類上は貨車の一種として扱われますが、貨物を積載することはありません。国鉄時代の記号は「キ」でした。

雪かき車の種類

日本で用いられた主な雪かき車には、以下の5種類があります。

ラッセル車: 前方に排雪板（ブレード）を備え、線路の左右に雪を掻き分けます。初期の除雪作業で活躍します。
マックレー車: 翼を使って線路脇の雪壁を崩し、雪を線路中央に寄せ集めます。ロータリー車と連携して使用されます。
ロータリー車: 回転する翼で雪を吸い込み、遠方へ投雪します。豪雪時の除雪に威力を発揮します。
ジョルダン車: 広幅の翼を持ち、駅構内や操車場など広い範囲の除雪に使用されます。
* ローダー車: 前の翼で雪をかき込み、ベルトコンベアで雪を処分します。

雪かき車の歴史と現状

日本における初期の雪かき車は、1880年代に幌内鉄道で使用された雪払車です。鉄道創業期から長らく活躍しましたが、降雪時期以外は遊休車両となるという課題がありました。

1960年代以降、除雪装置を着脱可能な「除雪兼用ディーゼル機関車」が登場し、徐々に雪かき車は置き換えられていきました。しかし、軸重の関係で使用できない線区も存在し、一部地域では蒸気機関車の代替としてしばらく残存しました。

現在では、ディーゼル機関車やモーターカーの普及により、JRでは貨車区分の雪かき車は全て引退しています。弘南鉄道と津軽鉄道にわずかに現存するのみとなっています。

各形式の詳細

ラッセル車

最も一般的な雪かき車で、豪雪地域の初期除雪に欠かせません。単線用と複線用があり、それぞれ雪を寄せる方向が異なります。DD15形やDE15形などのディーゼル機関車が牽引します。

マックレー車

ラッセル車で除雪した雪が積み重なり、雪壁が高くなった際に使用されます。雪壁を崩し、ロータリー車による投雪を補助します。キ800形やキ900形などが存在しました。

ロータリー車

線路上の雪を強力に除去する能力を持ちますが、豪雪時には限界もあります。蒸気動力式ロータリー車は、蒸気機関車と同様の構造を持ち、回転翼を駆動します。キ600形やキ620形などが活躍しました。

ジョルダン車

駅構内や操車場など、広い範囲の除雪に適しています。翼を広げて雪を掻き出す構造で、キ700形などが存在しました。

ローダー車

雪をかき込み、ベルトコンベアで処分する比較的新しい方式の雪かき車です。キ950形が存在しました。

キマロキ編成

極度の豪雪時に、マックレー車とロータリー車を連結した「キマロキ編成」が用いられました。機関車・マックレー車・ロータリー車・機関車の順に連結し、効率的な除雪作業を実現しました。

その他の雪かき車

1961年には、ジェットエンジンを利用した雪かき車が試作されましたが、騒音や燃費の問題から実用化には至りませんでした。

線路の除雪を行う鉄道車両

雪かき車以外にも、除雪用ディーゼル機関車や除雪用気動車が線路の除雪作業に用いられます。また、札幌市や函館市の路面電車では、「ササラ電車」と呼ばれる独特の除雪車が活躍しています。

雪かき車は、鉄道の安全運行を支える重要な役割を担ってきました。現在ではその姿を見る機会は少なくなりましたが、鉄道の歴史を語る上で欠かせない存在です。

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