羽鳥卓也

羽鳥卓也（はとり たくや、1922年 - 2012年）は、日本の経済学者であり、岡山大学の名誉教授としてその名を刻みました。彼の研究は、古典派経済学、とりわけアダム・スミスやデヴィッド・リカードといった巨匠たちの理論に焦点を当てていました。

岐阜県に生まれた羽鳥は、1947年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、学問の道を歩み始めました。専修大学や福島大学で教鞭を執った後、1962年には「古典経済学の研究」で名古屋大学から経済学博士号を授与されました。その後、福島大学教授、岡山大学法文学部教授を歴任し、1985年には経済学史学会の代表幹事を務めるなど、学会活動にも積極的に貢献しました。1988年に岡山大学を定年退官した後は、熊本学園大学で教鞭を執り、後進の育成にも尽力しました。

羽鳥の著作は、古典派経済学の核心に迫るものが多く、『近世日本社会史研究』（1954年）、『市民革命思想の展開 古典経済学成立史序説』（1957年）、『古典派資本蓄積論の研究』（1963年）、『古典派経済学の基本問題 蓄積論におけるスミス・マルサス・リカードウ』（1972年）などがあります。これらの著作は、古典派経済学の理論的枠組みを詳細に分析し、その歴史的背景を明らかにしようとするものでした。特に、リカードウの研究に力を注ぎ、『リカードウ研究 価値と分配の理論』（1982年）、『『国富論』研究』（1990年）、『リカードウの理論圏』（1995年）など、リカードウの理論を深く掘り下げた著作を多数発表しました。

また、羽鳥は翻訳家としても活躍し、リカードウの『経済学および課税の原理』や『利潤論』を翻訳しました。これらの翻訳は、日本の経済学研究者にとって貴重な資料となり、古典派経済学の理解を深める上で大きな役割を果たしました。

羽鳥卓也の経済学への貢献は多岐にわたり、その研究成果は今日の経済学研究においても重要な基盤となっています。彼の古典派経済学に対する深い洞察と、それを社会に伝えようとする情熱は、多くの研究者に影響を与え続けています。羽鳥の業績は、経済学史において重要な位置を占めており、今後もその影響力は衰えることはないでしょう。

主な著書

近世日本社会史研究 未来社 1954
市民革命思想の展開 古典経済学成立史序説 御茶の水書房 1957
古典派資本蓄積論の研究 未来社 1963
古典派経済学の基本問題 蓄積論におけるスミス・マルサス・リカードウ 未来社 1972
リカードウ研究 価値と分配の理論 未来社 1982.2
『国富論』研究 未来社 1990.1
リカードウの理論圏 世界書院 1995.3

共著

近世封建社会の構造 日本絶対主義形成の基礎過程 藤田五郎共著 お茶の水書房 1951
経済学史 吉田静一共編 世界書院 1979.6 (経済学叢書)

翻訳

経済学および課税の原理(リカードウ 吉沢芳樹共訳 世界大思想全集 河出書房 1964 のち岩波文庫
利潤論(リカードウ 世界思想教養全集 河出書房新社 1964)

参考

羽鳥卓也教授略歴・主要著作目録「経済系」1988-4

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