翳った旋舞

『翳った旋舞』の概要

松本清張の長編小説『翳った旋舞』は、1963年5月から同年10月まで『女性セブン』に連載され、1983年にカドカワノベルズから出版されました。本作は、入社が難しいことで知られる東京・有楽町のR新聞社に勤務する三沢順子が中心となり、彼女の成長と周囲の人間関係を描いています。物語は、仕事に対する順子の価値観や、彼女の周囲にいる人々との衝突、そして選択がテーマとなっています。

あらすじ

三沢順子は、R新聞社の資料調査部に配属された2年目の社員です。入社試験を通過したものの、配属先は地味な部門であり、部内の雰囲気はあまりよくありません。ある日、整理部員の木内から依頼されたS・フレッチャーの写真を手渡したところ、掲載された新聞に別の人物の写真が載っていることが発覚し、社内は騒然とします。この事件をきっかけに、順子は社内の人間関係や彼女自身の立ち位置に疑問を持つようになります。

次第に、彼女は自分の現状を見つめ直し、学生時代の友人でホステスの三原真佐子と再会します。その時、自由で派手な生活を送る真佐子との違いを痛感し、社会の厳しさを実感します。その後、川北良策編集局長との出会いを経て、さまざまな選択を迫られることになります。川北は、順子をテレビ局の専務に会わせ、タレントとしての道を提案するものの、順子はその選択に踏み切れません。

順子は再度テレビ局に行くことになり、そこで再び真佐子と再会し、マスコミの大物と噂される海野辰平とも対面します。ここでの川北の姿勢や、海野に対する反感から、順子は思いもしない行動に出てしまいます。彼女は海野に関する怪文書が社内に出回っていることを知り、R新聞社から離れ、海野との関係を結ぶことを決意します。

主な登場人物

• - 三沢順子：入社2年目のR新聞社社員で、資料調査部に所属。
• - 三原真佐子：順子の学生時代の友人で、ナイトクラブのホステス。
• - 川北良策：R新聞社の編集局長で、厳格に部下を統制する人物。
• - 末広善太郎：資料調査部の部長で、社内政治に熱心。
• - 海野辰平：保守的な新聞を買収したマスコミの大物。

エピソードと評価

この小説は、清張が描く女性の人生の逆境と、そんな中でも自らを見つめ直し、次なる選択を模索していく姿が描かれています。エッセイストの酒井順子は、この作品が「お嬢さん転落小説」の一つでありながら、順子の生き方が何となく流されるものとして新たな視点を提供していると指摘しています。また、研究者の綾目広治は、社員たちの出世欲と保身に執着する姿が描かれている点に言及しています。

関連項目

本作には、海野辰平が水野成夫がモデルとされ、ニュースメディアの裏側を描いた作品としても評価されています。

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