水野成夫

水野 成夫（みずの しげお）

水野成夫は、日本の実業家として知られ、フジテレビジョン（現在のフジ・メディア・ホールディングス）の初代社長を務めました。1899年11月13日に静岡県小笠郡佐倉村（現在の御前崎市）で生まれ、1972年5月4日に亡くなるまで波乱に満ちた人生を送りました。

学歴と早期の活動

水野は、旧制静岡中学（現在の静岡県立静岡高等学校）を卒業後、旧制第一高等学校を経て、1924年に東京帝国大学法学部を卒業しました。学生時代には文学に親しみ、夏目漱石や森鷗外などの作品を好みました。また、中学や高校では柔道部に所属し、顕著な成績を収めました。さらに、東京大学在学中には共産主義運動に関与し、日本共産党に入党しました。

1926年には関東地方委員会の代表として第3回大会に出席し、1927年にはコミンテルンに派遣されて中国での政治運動に関与しました。しかし、1928年に三・一五事件で逮捕され、獄中での転向声明を発表。この転向はその後の共産主義運動に大きな影響を及ぼしました。

翻訳家としての活動

水野はその後、政治から離れ、翻訳家として新たな道を歩み始めます。特にフランス文学の翻訳に努め、アナトール・フランスの作品などを数多く日本に紹介しました。彼の翻訳による『神々は渇く』は高い評価を得て、ベストセラーになりました。翻訳を通じて文学界に多大な影響を与え、文化活動にも深く関与しました。

経済と実業界への転身

水野は経済活動に従事するようになり、1940年には国策パルプ工業を設立しました。この会社は後に国策パルプと合併し、水野は同社の常務取締役に就任しました。1946年には出版社の酣燈社を設立し、文芸・学術出版に力を入れましたが、数年後に経営から手を引きました。

水野は1960年に国策パルプの会長に就任する一方、1956年には文化放送の社長にも就任。多くのメディア企業に経営陣として参加し、「財界のマスコミ対策のチャンピオン」とも称されました。特に産経新聞の買収を通じて、在京マスコミを抑える立場となり、「マスコミ三冠王」との評価を得ました。

文化への貢献

水野は将棋や音楽にも強い関心を持ち、文化放送の傍系事業として日本フィルハーモニー交響楽団を結成しました。また、将棋の棋聖戦の企画にも関与し、升田幸三を支援しました。さらには、国鉄スワローズ（現在の東京ヤクルトスワローズ）を買収し、プロ[[野球]]にも進出しました。

晩年と存命中の評判

最晩年には健康を害し、1972年に帰らぬ人となりました。水野は自由な発想と意欲の高い人物であり、政商としての一方で文化にも多大な影響を与え続けました。彼の家族や子孫も、ビジネスや文化の分野で活躍しています。水野成夫の生涯は、共産主義運動から実業界への転身という独自の道のりを築き上げ、多面的な才能と影響力を残したことが評価されています。

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