翼は心につけて

『翼は心につけて』：15歳の少女が織りなす、生命の賛歌

1978年、日本の映画界に感動を呼び起こした作品『翼は心につけて』。この映画は、15歳の中学生が骨肉腫という病魔と闘い、右腕を失う大手術を受けながらも、力強く生き抜く姿を描いた感動作です。実話を基にしたノンフィクション小説を映画化し、当時まだ無名だった石田えりさんの鮮烈なデビュー作としても知られています。

等身大の少女と、それを取り巻く人々

主人公の鈴木亜里を演じるのは、本作で鮮烈なデビューを飾った石田えり。彼女の瑞々しい演技は、病と闘う少女の葛藤や希望、そして何よりも強い生命力をスクリーンいっぱいに映し出しています。亜里の家族、友人、そして医師や看護師たち。彼らを取り巻く人々の温かい愛情と支えが、亜里の生き方を力強く支えています。フランキー堺、香川京子といったベテラン俳優陣の深みのある演技も、作品全体の重厚感を増しています。

撮影地と、時代背景

映画の撮影は、主に開校直前の狛江市立狛江第三中学校で行われました。調布、狛江、鶴川といった東京近郊の街並みや、京王線、小田急線沿線、甲州街道、鶴川街道、多摩川沿いなど、日本の風景が丁寧に描かれています。1970年代後半の日本の社会や文化が背景として垣間見えるのも、この映画の魅力の一つです。

豪華なスタッフ陣

監督は堀川弘通、脚本は寺島アキ子と堀川弘通が担当。さらに、撮影に中尾駿一郎、照明に久米成男、美術に川崎軍二といった、日本映画界を代表するスタッフ陣が参加しています。音楽は三善晃が担当し、主題歌「翼は心につけて」と挿入歌「翼を下さい」は、映画の世界観をさらに深める名曲として広く知られています。主題歌「翼は心につけて」は、横井久美子が歌い、挿入歌として人気を博した「翼を下さい」も、横井久美子と星久とウィングスによって歌われています。

映画を超えて、多くの人々の心に響く作品

『翼は心につけて』は、単なる感動的な物語ではありません。病気と闘う少女の生き様を通して、生命の尊さ、人間の強さ、そして愛の大切さを私たちに問いかける作品です。1978年の公開から今日まで、多くの観客の心を掴み、幾度となくテレビ放送やDVD化もされています。関根庄一による原作小説『翼は心につけて―ガンと闘って死んだ十五歳の少女が教えてくれたこと』も、映画と合わせて多くの人に読まれています。

映画の音楽がきっかけで、アニメーション映画『赤毛のアン』の主題歌の作曲が三善晃に決定したというエピソードも残っています。

本作は、主人公が入学を希望していた永和高校のモデルになった高校のHPでも紹介されており、ロケ地として使われた場所についても言及されています。

『翼は心につけて』は、時代を超えて、多くの人々の心に響き続ける、不朽の名作と言えるでしょう。

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