耕起

耕起（こうき）

耕起とは、農業において、田畑の土を掘り起こしたり、上下にひっくり返したりする一連の作業を指します。これは、作物を植え付ける前の段階で、土壌を作物の生育に適した状態にするために不可欠な工程です。耕起によって土を細かく砕き、均平に整える作業を含め、土壌全体を耕し準備することを耕耘（こううん）と呼びます。

目的と効果

そのままでは作物の根が張りにくい、あるいは生育しにくい土壌に対して耕起が行われます。主な目的は、土の塊を細かく砕き、土壌全体をふかふかにすることで、土壌の通気性や水はけを改善することです。また、土を掘り起こして空気に触れさせることで、適度に水分が抜けた状態を作り出す乾土効果をもたらし、土壌微生物の活動を活発にします。

耕起による効果は多岐にわたります。

雑草の抑制: 地表に生えた雑草を根ごと土に埋め込み、その後の発生を抑えます。
有機物の分解促進: 作物の残渣や堆肥などを土に混ぜ込むことで、土壌微生物による分解を促し、土壌養分を有効に利用できるようにします。
土壌構造の改善: 土の粒子が集まって適度な隙間を持つ団粒構造の形成を助け、通気性や水はけ、保水性を向上させ、根が伸びやすい環境を作ります。
病害・害虫の抑制: 土壌表面の病原菌や害虫、その卵などを地中に埋め込んだり、乾燥にさらしたりすることで密度を減らす効果が期待できます。

利点と課題、不耕起栽培

耕起は上述のように多くの利点を持つ一方で、課題も存在します。土壌表面が耕されることで、雨水による土壌養分の流出を招きやすくなったり、土壌が乾燥しやすくなったりする懸念があります。また、特に大規模な農業においては、農業機械の使用に伴う燃料費や機械の維持管理費などのコストも発生します。

こうした耕起に伴うデメリットや環境への負荷を考慮し、近年では不耕起栽培も注目されています。これは土を耕さない、あるいはごく浅くしか耕さない栽培方法で、作業の省力化、土壌侵食の抑制、土壌の保水力維持などを目指して行われます。

実施時期と作業の種類

稲作をはじめとする多くの農作物では、主に植え付け前の春に土を準備する田起こしや畑起こしとして、また収穫後の秋には翌年に備える土づくりとして耕起が行われるのが一般的です。

耕耘の方法は、土の処理の仕方によって主に二つに分けられます。

反転耕: プラウ（鋤）のような器具で土の層を切り取り、文字通りひっくり返すように深く耕す方法です。地表の雑草や残渣物を深く埋め込むのに適しています。土の塊が大きく残るため、その後ハローやサブソイラなどの別の機械を使って細かく砕き（砕土）、土をさらに深く耕し、硬盤層を破砕することもあります。
撹拌耕: ロータリー耕うん機のように、回転する爪で土を細かく砕きながら混ぜ合わせる方法です。反転耕に比べて土を深くは耕しませんが、一度の作業で耕起と砕土を同時に行えるため効率的です。

また、作物が成長している途中で、畝間などの土を軽く耕す中耕も行われることがあります。これはカルチベータなどの機械で行われ、雑草の抑制や土壌への空気供給、根の伸長促進などを目的とします。

歴史

歴史を遡ると、耕起はかつて犂（すき）や鍬（くわ）を使った人力、あるいは牛や馬に農具を牽かせて行うのが一般的でした。しかし、近代以降の農業機械化の波に乗って、トラクターに装着する各種のアタッチメントや耕うん機など、様々な農業機械による作業が主流となっています。これにより、大規模な面積を効率よく耕すことが可能になり、農業生産性の向上に大きく貢献しました。

もう一度検索