耳うどん

耳うどん（みみうどん）

耳うどんは、栃木県佐野市葛生地区および宇都宮市に伝わる独特の郷土料理です。この料理の特長は、麺が耳の形をしている点にあります。その名も「耳うどん」。

概要

耳うどんは、その形状から名付けられています。特に佐野市では、正月を迎える際にこの料理が食される習慣があります。人々は耳うどんを手に持ち、耳に当てることで「いい耳聞け」と唱え、良い年を願っていました。この風習は、耳うどんを食べることで、その一年に幸運をもたらすとの信仰が込められています。

一方、宇都宮市では、星野宮神社の氏子たちの間で、同じく正月の祭礼時に耳うどんを食する風習が見られます。佐野市の家庭では、正月の来客に合わせて手間のかかる料理を準備することが大変であるため、年末に耳うどんを作り、その後冷水に浸して保存し、正月に振る舞います。宇都宮市でも、同様に耳うどんを年末に準備し、乾燥保存して祭りの際に利用されてきました。

また、耳を食べることには別の意味合いもあります。耳うどんは、悪魔や悪神の耳に例えられ、正月に耳を食べることで、悪口や悪い話を耳にすることから遠ざかり、円満な人間関係を保つことができるとの言い伝えがあります。このように、耳うどんは食文化に深く根付いた特別な存在です。

最近では、耳うどんは正月に限らず年間を通して楽しまれるようになりました。調理法が一般的なうどんと似ているだけでなく、トマトソースを添えてパスタとしても食べられることがあります。

歴史

耳うどんの起源は江戸時代末期にさかのぼります。大正時代には、魔除けの意識が高まり、耳うどんを食することが一般的になりました。また、佐野市葛生地区では正月に餅を食べない習慣があり、高価な餅の代わりとしてこの料理が選ばれたとも考えられています。

調理法

耳うどんの調理方法は、一般的なうどんとほぼ同様です。まず、小麦粉にぬるま湯と塩を加えてしっかりと練ります。次に、平らに伸ばし、マッチ箱サイズの長方形にカットします。それを二つ折りにし、内側の両端を合わせて閉じます。

仕上げに、鰹節でだし汁を作り、サツマイモ、大根、ニンジン、ゴボウなどの野菜を刻んで煮ます。そして、醤油やみりんなどで味付けしただし汁に、耳の形のうどんを加えて煮込みます。

まとめ

耳うどんは、栃木県の伝統的な料理として地元の人々に愛されており、風味豊かな味わいと共に、長い歴史と多様な食文化を持っています。年末の準備や正月の食卓に欠かせない存在であり、地域のシンボルともいえる料理です。

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