聖アンジェロ砦 (カンヌール)

聖アンジェロ砦について

聖アンジェロ砦、またの名をカンヌール砦またはカンヌール・コッタは、インドのケララ州にあるカンヌール市から約3キロメートルの地点に位置する歴史ある砦です。この場所は、アラビア海に面しており、適度な海上交通の利便性を備えた重要な地理的条件から、数世紀に渡って戦略的拠点として利用されてきました。

歴史的背景

1498年、ヴァスコ・ダ・ガマのインド探検中に、地元の王であるコラティリがポルトガルに土地を提供したことが、聖アンジェロ砦の起源となります。1505年の10月23日、ポルトガルのインド副王フランシスコ・デ・アルメイダはこの土地に砦を建設する許可を得て、翌日の10月24日からその工事が始まりました。当初の構造物は木製であり、1505年10月30日には完成を見ました。この砦の初代隊長であるロウレンソ・ブリットは150名のポルトガル駐屯軍を指揮し、2隻の船を従えていました。

砦の建設後、ポルトガルはこの地を巡って現地支配者のカリカット王や新たなコラティリ王から攻撃を受けましたが、砦は陥落することはありませんでした。当時のポルトガルの支配権は強固であり、アルメイダの任期は1508年で終わる予定でしたが、彼は後任のアフォンソ・デ・アルブケルケとの交代を拒否し、ディーウ沖の海戦に参加します。

1510年にはゴアを征服し、聖アンジェロ砦はその後のポルトガル艦隊の作戦において重要な役割を果たしました。カンヌールのポルトガル居留地は収入源を持たなかったため、砦の維持に必要な資金はゴアから供給されました。

その後の変遷

1663年にはオランダがポルトガルからこの砦を奪取し、以後彼らは砦を近代化しました。オランダ行政下で築かれた堡塁は、ホランディア、ゼーランディア、フリースランディアの3つの主要な建築物となり、その後もポルトガルの元々の砦は解体されました。1772年には、オランダが地元のアラッカル王国のアリ・ラジャに砦を売却。1790年にはイギリス軍によって占領され、1947年までマラバール海岸の主な軍事基地として機能しました。

現在の状況

現在、聖アンジェロ砦はインド軍のカンヌール駐屯地内に位置し、インド考古調査局の管理下で大切に保護されています。観光名所としても人気があり、多くの訪問者が歴史的な雰囲気を感じることができます。砦を守るために配置された6人の観光警官が、訪れる人々に安全な環境を提供しています。

2015年には、砦の敷地から数千発の古い砲弾が発見されました。これらの砲弾は、かつての軍備として地下に埋められていたと考えられています。現在、モッピラベイ港やアラッカル王国時代のモスクも近隣にあり、砦の周辺には歴史的な魅力があります。砦は一般公開されており、観光客は午前8時から午後6時まで訪れることが可能です。

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