聖セバスティアヌス (ラファエロ)

聖セバスティアヌス

聖セバスティアヌスは、盛期ルネサンスの著名な画家、ラファエロ・サンツィオによって描かれた重要な作品であり、1501年から1502年頃に制作されました。この絵画は、キリスト教の殉教者である聖セバスティアヌスを描いたもので、油彩が用いられています。ラファエロがまだ独特のスタイルを確立する前の初期作例として、絵画の仕上げや明暗の扱いにおいて、若いラファエロの卓越した技術が顕れています。この作品は、19世紀の美術コレクターであるグリエルモ・ロキス伯爵により真作と確認されました。

主題

聖セバスティアヌスは、ローマ皇帝ディオクレティアヌス治下の時代に生き、プラエトリアの軍に属していました。彼は密かにキリスト教徒となり、信仰を隠しながら活動していましたが、仲間を助けようとした際に改宗が発覚。矢によって処刑されるものの、奇跡的に回復し，相応しい時期に信仰を公言しました。その結果、再度処刑を受け、今度は棍棒によって命を落としました。この物語は、彼が持つ信仰の強さと、信念のために命を賭けた姿を象徴しています。

作品の特徴

ラファエロは聖セバスティアヌスを、女性的な美しさを持つ姿で描いており、後頭部には光輪が輝き、赤いマントを身に着け、手には特徴的な矢を握っています。この赤いマントは彼の殉教者としての役割を示していますが、彼の表情には苦痛が見て取れないことが、本作品の特異な点です。従来の聖セバスティアヌスの像は、矢で貫かれた裸体で樹木や柱に縛られた姿が一般的ですが、この作品では衣服をまとった聖セバスティアヌスが優雅に立ち、穏やかな雰囲気を醸し出しています。ラファエロは彼の制約のなさに、新しい視点を持ち込み、師であるペルジーノの影響を受けつつも、独自の感性を融合させているのです。

来歴

この絵画の来歴は19世紀初頭までさかのぼりますが、ズルラ伯爵のコレクションに現れるまでの詳細は不明です。1818年にミラノの彫刻家ジュゼッペ・ロンギがこの絵を購入し、後にロキス伯爵の手に渡りました。伯爵は自身のコレクションにこの作品を加え、熱心にラファエロの解説を展開しました。その後、伯爵の死後に、作品はベルガモ市にてアッカデミア・カッラーラに収蔵されることになりました。

保存状態

作品は良好な保存状態で、薄い板絵にはたわみがほとんどなく、絵具層もほぼ完璧です。しかし、1932年に行われた修復で上塗りが施され、その結果、変質部分が見受けられるようになりました。近年、2013年から2014年には、ミラノの修復研究所で科学調査とともに修復が行われ、ラファエロ独自の技法や使用した顔料に関するいくつかの重要な発見がされました。この絵画は、元の美しさを取り戻しており、今ではその魅力を再び多くの人々に伝えています。

今なお、聖セバスティアヌスのこの作品は、絵画としてだけでなく、宗教的な意味合いを持つ重要な文化財として評価されています。

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