聖パトリック旗

聖パトリック旗とは

聖パトリック旗は、白地に赤いサルタイアー（斜め十字）が描かれた旗で、アイルランドの守護聖人である聖パトリックの象徴とされています。紋章学的には「Argent, a saltire gules（銀地に赤のサルタイアー）」と記述されます。

しかし、その起源や歴史的な関わりについては議論があり、アイルランドのナショナリストからはイギリスの発明によるものとして拒絶されることもあります。現在、アイルランド全体で統一的に認められている旗は存在しません。

歴史と由来

聖パトリック旗が明確に使用された初期の記録は、1783年に聖パトリック騎士団のアイルランド総督ジョージ・ニュージェント＝テンプル＝グレンヴィルが上役に宛てた手紙に見られます。

聖パトリック騎士団は、アイルランドに自治権を与えた1782年法令に基づき、アイルランド議会の政治的支援を得るために創設されました。そのバッジに使われた十字の起源は不明確で、フィッツジェラルド家の紋章から取られたという説もありますが、確証はありません。

CAIN（アイルランド紛争アーカイブ）のウェブサイトでは、聖パトリック十字は「聖ジョージ十字に対応するものとして、17世紀にダブリン城において英国当局によってデザインされたのが最初である」とされています。アイルランドの国章は16世紀以来、青地に金のハープであり、赤いサルタイアーは聖パトリックとの結びつき以前はX字型ではなかったという指摘もあります。

サルタイアーの初期の使用例

サルタイアーは、1783年以前にもアイルランドで使用されていたとする資料も存在します。

1480年頃に鋳造されたアイルランドのコインには、サルタイアーのついた盾が描かれています。
1601年から1602年のキンセール包囲戦の絵地図では、アイルランド・スペイン連合軍が赤いサルタイアーで表されています。
1612年からのダブリンのトリニティー・カレッジの紋章には、白地に赤いサルタイアーの旗が見られます。
17世紀後半から18世紀にかけての地図や旗の本では、白地に赤いサルタイアーの旗がアイルランドを表すものとして使用されていました。

その他の聖パトリック十字

聖パトリックが殉教者ではないことから、十字のシンボルを使うのは不適切だという意見もあります。しかし、聖パトリックと結び付けられた十字は他にも存在します。

古いハイクロスの中で「セント・パトリック・クロス」と呼ばれるものが、聖人と伝説的なかかわりをもつ場所に存在します。
セント・パトリック半ペニー硬貨には、聖パトリックが総大司教十字がついた司教杖を持つ姿が描かれています。
* 1935年の文章には、アイルランド・カトリック連合の時代において「本当の聖パトリック十字は四角い旗で、赤いサークルの緑地に白十字であった」と記述されています。

聖パトリックの祝日のバッジ

以前は、聖パトリックの祝日に紙やリボンで作られた十字をつけるのが一般的な風習でした。しかし、現在伝わっているバッジは多くの色があり、サルタイアーというよりはまっすぐな形をしています。

ユニオンフラッグへの組み込み

1800年の合同法により、グレートブリテン王国とアイルランド王国が合併し、アイルランドを表すものとして赤いサルタイアーがユニオンフラッグに組み込まれました。

現代における使用

現在、聖パトリック旗は北アイルランドにおいて、ユニオンフラッグやアルスター・バナーよりも政治的に中立な融和のシンボルとして使用されることがあります。また、ローンボウルズの全島大会では聖パトリック旗の下で競技が行われます。

聖パトリック旗は、その起源や意味合いについて様々な議論があるものの、アイルランドの歴史と文化を象徴する旗の一つとして、現代においても使用され続けています。

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