聖メリーの鐘

聖メリーの鐘

『聖メリーの鐘』（The Bells of St. Mary's）は、1945年にアメリカ合衆国で製作された心温まるドラマ映画です。本作は、財政難にあえぐカトリック教会とその付属学校の再生を目指す人々の姿を描いています。特に、教会に新たに赴任してきた型破りな神父と、学校を守ろうとする修道女長の間に生まれる人間模様が物語の中心となります。主演はビング・クロスビーとイングリッド・バーグマンという当時の人気俳優が務めました。

本作は、アカデミー作品賞を受賞した前年の作品『我が道を往く』（Going My Way）の続編にあたります。興味深いことに、『聖メリーの鐘』の方が先に製作が開始されたものの、一時中断を経て、『我が道を往く』が先に完成・公開されました。このため、公開順としては『我が道を往く』が先、本作が後に続く形となりましたが、作品世界においては本作が『我が道を往く』の続きとして位置づけられています。アカデミー賞では作品賞を含む複数の部門にノミネートされ、その質の高さが評価されました。

物語のあらすじ

物語は、経営が厳しく、付属する学校の校舎も老朽化が進む聖メリー教会を舞台に始まります。そこに新たな主任司祭として迎えられたのが、型破りな言動で知られるチャールズ・オマリ神父（ビング・クロスビー）です。教会の窮状を目の当たりにしたオマリ神父は、費用のかさむ学校を閉鎖し、生徒たちを他の近代的な学校へ転校させることを提案します。

一方、学校の運営を担うシスターたちのリーダーであるメアリー・ベネディクト修道女長（イングリッド・バーグマン）は、生徒たちへの深い愛情と学校への強い使命感を抱いています。シスターたちは、地元の実業家ホーレスP.ボガーダス氏（ヘンリー・トラヴァーズ）が教会の土地の一部に建てた新しいビルを、学校のために寄付してもらうことを密かに期待していました。オマリ神父とベネディクト修道女長は、ともに学校の窮状を救おうと尽力するが、そのアプローチの違いから意見が対立することも少なくありません。

学校では、生徒たちの抱える様々な問題も描かれます。例えば、他の児童にいじめられている生徒の問題や、母親の生活が不安定なため教会が預かっているパッツィという8年生の女子生徒（Ｊ・キャロル）の進級問題などです。オマリ神父とシスターたちは、これらの問題にも心を砕き、生徒たちを温かく見守ります。

やがて、物語はベネディクト修道女長自身の健康問題という予期せぬ展開を迎えます。診察した医師は、彼女の肺に影があること（結核の兆候）を発見し、静養と気候の良い土地への転地療養をオマリ神父に勧告します。異動の理由を詳しく聞かされなかったベネディクト修道女長は、オマリ神父との間の意見の対立が原因で自分が遠ざけられるのだと誤解し、苦悩します。しかし、出発の間際、オマリ神父は彼女に異動勧告の本当の理由が健康上の問題であることを明かします。真実を知ったベネディクト修道女長は、安堵と感謝の表情を見せ、見送りのシスターたちに見送られながら旅立っていくのでした。

本作は、感動的な人間ドラマでありながら、全編を通じてユーモラスな場面が散りばめられています。特に、イングリッド・バーグマン演じるベネディクト修道女長が、子供たちに野球やボクシングを教えるなど、従来の修道女像にとらわれない茶目っ気のある演技を見せるシーンは大きな魅力となっています。ビング・クロスビーの飄々とした神父像とバーグマンの厳格さの中にも優しさを秘めた修道女像が見事に調和し、観る者に温かい感動を与えてくれる作品です。

この作品は、公開後も長く人々に愛され、日本でも過去に複数回テレビで放送されています。例えば、1961年6月5日にはフジテレビ系で、1976年12月25日には日本テレビ系で放送された記録があります。世代を超えて語り継がれる名作として、今なお多くの映画ファンに親しまれています。

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