聖女ジャンヌ・ダーク

聖女ジャンヌ・ダーク：夭折の聖女の生涯を描いた歴史映画

1957年、イギリスとアメリカ合衆国で共同制作された映画『聖女ジャンヌ・ダーク』は、フランスの国民的英雄にして聖女、ジャンヌ・ダルクの生涯を克明に描いた伝記映画です。監督は名匠オットー・プレミンジャー、主演は当時まだ若手女優だったジーン・セバーグ。彼女にとって本作はデビュー作という記念碑的な作品にもなっています。

本作の脚本は、20世紀を代表する劇作家ジョージ・バーナード・ショーによる戯曲『聖女ジョウン』を原作としています。ショーの描くジャンヌ・ダルク像は、単純な聖女像ではなく、時代と戦い、信念を貫いた一人の女性像として描かれており、その複雑な人間性を深く掘り下げた作品となっています。プレミンジャー監督は、ショーの戯曲を忠実に映画化することに成功し、ジャンヌ・ダルクの生涯を、重厚なドラマとして見事に表現しています。

映画は、フランス王シャルル7世の夢から始まります。老王の前に、かつて火刑に処されたジャンヌ・ダルクの亡霊が現れ、王は若い頃の記憶をたどりながら、ジャンヌとの出会いと、彼女と共に過ごした日々を回想します。物語は、ジャンヌが神の声を聞き、フランスを救うために戦場へと赴くところから、壮大なスケールで展開していきます。彼女の揺るぎない信仰心、フランス王への忠誠心、そして敵対する勢力との激しい闘争が、リアルに、そしてドラマチックに描かれています。

キャストには、ジャンヌ・ダルク役のジーン・セバーグの他、シャルル7世役にリチャード・ウィドマーク、そしてデュノア役のリチャード・トッド、コーション役のアントン・ウォルブルックなど、実力派俳優たちが名を連ねています。特に、ジョン・ギールグッド演じるウォリック伯は、ジャンヌ・ダルクの運命を大きく左右する重要な人物として、圧倒的な存在感を示しています。

『聖女ジャンヌ・ダーク』は、日本での劇場公開はありませんでしたが、NHK衛星第2で放映されたことで、日本の観客にも知られるようになりました。近年では、ビリー・ジーンの伝記映画『ビリージーンの伝説』の中で、主人公ビリー・ジーンが本作に影響を受けて髪型を変えるシーンがあることでも話題になりました。

歴史的な事実と、ショーのドラマ性あふれる脚本、そして名優たちの熱演が融合した『聖女ジャンヌ・ダーク』は、宗教、歴史、そして人間ドラマに興味のある方にとって、必見の1本と言えるでしょう。この映画を通して、私たちはいまだに多くの人々の心を掴んで離さない、ジャンヌ・ダルクという女性の生き様を改めて見つめ直すことができるのです。 現在では、allcinema、IMDb、TCM Movie Database、Rotten Tomatoesなどのデータベースサイトで詳細な情報を確認することができます。

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