ジーン・セバーグ

ジーン・セバーグ：輝きと影の生涯

ジーン・セバーグ (1938年11月13日 - 1979年8月30日)。その名は、ハリウッド黄金時代からヌーヴェルヴァーグ、そして激動の60～70年代へと繋がる、ハリウッド女優の波乱に満ちた人生を象徴している。アイオワ州の薬剤師と代理教員を両親に持ち、穏やかな家庭環境で育った彼女は、映画監督オットー・プレミンジャーに見出され、1957年、映画『聖女ジャンヌ・ダーク』で鮮烈なデビューを果たす。

続く1958年、『悲しみよこんにちは』でベリーショートの髪型が「セシルカット」として流行を巻き起こし、一躍スターダムにのし上がった。同年、フランス人弁護士フランソワ・モレイユと結婚。しかし、結婚生活は長く続かず、1960年には離婚。

1960年、ジャン＝リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』への出演は、セバーグをヌーヴェルヴァーグのアイコンへと押し上げた。彼女の自由奔放なイメージと、ゴダールの革新的な映像表現は、世界中でセンセーションを巻き起こした。また、同時期にはモレイユとの共同制作映画『La Récréation』にも主演。女優としての活動はアメリカとフランス両国に渡り、30本以上の映画作品に出演するも、大ヒット作には恵まれなかった。

セバーグは、第二の夫となるフランス人作家ロマン・ガリー監督作品にも出演。私生活では、公民権運動や反戦運動に熱心に活動し、全国有色人向上協会やブラック・パンサーを支援した。しかし、この活動がFBIの標的となり、執拗な嫌がらせに遭うことになる。

特に1970年、妊娠中のセバーグは、ブラック・パンサーの幹部との間に子供を身ごもったというデマを流される。このデマは、精神的に追い詰めていた彼女をさらに深く奈落に突き落とす結果となる。結局、彼女は流産を経験し、その胎児の写真を記者会見で公表するという衝撃的な行動に出た。この出来事以降、セバーグは深刻なうつ病に苦しむようになる。

1979年8月、パリで失踪したセバーグは、11日後、自身の車の後部座席で亡くなっているのが発見された。アルコールとバルビツール酸塩による自殺と見られ、遺書には「許してください。もう私の神経は耐えられません」と記されていた。

彼女の死は、多くのファンに衝撃を与え、ハリウッド黄金時代から激動の時代を駆け抜けた彼女の人生は、多くの謎と悲劇を残した。現在、セバーグはパリのモンパルナス墓地に眠る。セバーグの複雑な人生は、2019年の映画『セバーグ』（クリステン・スチュワート主演）でも描かれている。彼女の短いながらも激動に満ちた人生は、今もなお人々の記憶に深く刻まれている。

主な出演作品

聖女ジャンヌ・ダーク (1957)
悲しみよこんにちは (1958)
勝手にしやがれ (1960)
さよならパリ (1961)
ペルーの鳥 (1968)
大空港 (1970)
殺し (1971)

関連書籍

Richards, David (1981). Played Out: The Jean Seberg Story. Random House.
* ギャリー・マッギー『ジーン・セバーグ』石崎一樹訳 水声社 (2011)

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