聖母子 (ベッリーニ、ローマ)

ジョヴァンニ・ベッリーニが1510年頃に制作した油彩画『聖母子』（伊: Madonna col Bambino）は、ルネサンス期のヴェネツィア派を代表する作品の一つです。現在、ローマのボルゲーゼ美術館に所蔵されており、ベッリーニの他の聖母子像、例えば1505年の『牧草地の聖母』、1509年の『聖母子』、1510年の『聖母子』（ブレラ）と比較されることもあります。

ベッリーニがこの作品を制作した時、彼は既に80歳近くになっていましたが、その画風は常に新しい傾向を取り入れていました。この作品の背景に描かれた抒情的な風景描写は、当時人気のあったジョルジョーネを彷彿とさせます。批評家の間では、この作品の真作性について意見が分かれており、オリヴァーリはベッリーニの最後の真筆の『聖母子』と評価していますが、ハイネマンは工房の作品であるとしています。

この作品の大きな特徴は、聖母マリアと幼子イエスが互いに視線を交わしていない点です。しかし、二人の間には、交錯する仕草によって強い絆が表現されています。マリアは幼子イエスをしっかりと抱きしめるのではなく、鑑賞者の方に差し出すように抱いています。この表現は、イエスが神の子として人々に現れるというキリスト教的な意味合いを示唆しているのかもしれません。

この作品は、ベッリーニの卓越した色彩感覚と繊細な筆致が際立っており、ルネサンス期の絵画における聖母子像の表現に新たな境地を開いた作品として高く評価されています。

作品詳細

作者: ジョヴァンニ・ベッリーニ
制作年: 1510年頃
技法: 油彩、板
所蔵: ボルゲーゼ美術館 (ローマ)

関連作品

『牧草地の聖母』 (1505年、ロンドン)
『聖母子』 (1509年、デトロイト)
『聖母子』 (1510年、ブレラ)

参考文献

ボルゲーゼ美術館の絵画関連資料

外部リンク

* ボルゲーゼ美術館公式サイト

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