聖母子と二人の天使 (ボッティチェッリ、ワシントン・ナショナル・ギャラリー)

作品概要

サンドロ・ボッティチェッリの『聖母子と二人の天使』は、15世紀後半のイタリア・ルネサンス期に描かれたテンペラ画です。この作品は、ボッティチェッリの初期の聖母子画の一つであり、彼の師であるフィリッポ・リッピの影響を強く受けています。現在は、ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー・オブ・アートに所蔵されています。

作品詳細

画面の中央には、聖母マリアが椅子に座り、幼子イエスを抱き上げています。マリアは横顔でやや下を向き、イエスを見つめています。一方、イエスは鑑賞者の方に視線を向けています。マリアは赤い衣の上に深い緑色のクロークを羽織り、胸元でブローチで留めています。金髪は後ろでまとめられ、薄い白いヴェールで顔を縁取るように覆われています。

画面右側には二人の天使が立ち、イエスの体を下から支えています。手前の天使は鑑賞者を見つめており、もう一人の天使は画面右側を見上げています。二人の天使の間からは白い百合の花が斜めに伸びています。

聖母マリアが座る椅子は木製で、タッセル付きのクッションが置かれています。背景にはピンクがかった明るいグレーの壁があり、3つの窓からは青空が見えます。天井にはサファイアブルーの天井板がはめ込まれ、奥の壁には同色の貝殻状の装飾が施されています。天井近くには、栗色の花綱が金の金具で左右から吊り下げられています。

制作背景と影響

この作品は、フィリッポ・リッピの同名の作品に影響を受けていると考えられています。また、聖母が座っている椅子の側面には、メディチ家の紋章と思われるラウンデルが描かれていることから、メディチ家からの依頼で制作された可能性が高いです。紋章の構成から、1465年以前に制作されたと推測されています。

作品の帰属

この作品の帰属については、美術史家の間で議論がなされています。初期にはボッティチェッリの作品であることに疑問が呈されましたが、近年ではボッティチェッリの初期の作品として評価されています。

作品の来歴

作品の初期の来歴は不明ですが、19世紀後半には複数の個人コレクションに渡ったと考えられています。その後、パリの美術商シャルル・セデルマイヤーのコレクションを経て、アメリカ合衆国の慈善家ジェネヴィーヴ・ガーヴァン・ブレイディの手に渡りました。彼女の死後、サミュエル・H・クレス財団によって購入され、1943年にナショナル・ギャラリー・オブ・アートに寄贈されました。

作品の特徴

この作品では、高価な顔料である金や青が贅沢に使用されており、ルネサンス期の華やかな雰囲気を醸し出しています。ボッティチェッリ特有の優美な人物描写や繊細な筆致が見られ、彼の初期の傑作として知られています。

まとめ

ボッティチェッリの『聖母子と二人の天使』は、彼の初期の聖母子画の中でも特に重要な作品であり、師であるフィリッポ・リッピの影響を受けつつも、独自の様式を確立していく過程を示すものです。メディチ家との関連性や作品の来歴も興味深く、ルネサンス美術を語る上で欠かせない作品の一つと言えるでしょう。

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