聖霊論

聖霊論についての考察

聖霊論（せいれいろん）は、組織神学の一領域であり、三位一体の神の中で独自の位格を持つ聖霊についての学問です。この論は、聖霊が人々に愛を注ぎ、幸福な人生を提供する重要な役割を果たしているという見解に基づいています。

聖書における聖霊論

旧約聖書

旧約聖書の中で、聖霊の存在と働きは明らかにされています。創世記において、聖霊は創造の業に深く関与しています。創世記1章2節では、「神の霊が水の表を動いていた」と記述され、人間の創造においても聖霊が重要な役割を果たします。つまり、創世記2章7節では、神が地のちりに命の息である聖霊を吹き込んで人間を創造したと示されています。

また聖霊は、神が選んだ指導者に与えられる存在でもあります。民数記11章17節において、モーセに神の霊が注がれ、特別な能力を与えられたことが記録されています。聖霊の働きは、預言者にも及びます。第一サムエル記10章10節では、サウルに聖霊が臨んだ際、恍惚の状態になって預言する様子が描かれています。さらに、詩篇51篇11節では、ダビデが罪を犯した後に聖霊によって神との交わりを再び取り戻すことができると告白しています。これらの記述から、聖霊が救済や指導に深く関与していることが理解されます。

新約聖書

新約聖書に目を向けると、イエス・キリストの誕生は聖霊によるものであったと記されています（マタイ1章18節）。弟子たちに聖霊が注がれるのは、父が与えた約束に基づくものであり、この出来事は使徒の働き1章4節に見られます。また、使徒の働き2章では、ペンテコステの日に聖霊が注がれたことが教会の成立に寄与した重要な出来事として描写されています。

聖霊は、新生においても重要な役割を果たします。ヨハネの福音書3章8節では、新たに生まれるためには聖霊によることが強調され、信者が神の国に属するための不可欠な要素とされています。

ディデュモスの聖霊論

ディデュモスは、聖霊の本質について詳述しています。彼によれば、聖霊は非物体的であり、変わることのない存在であり、無限で、聖なる本質を持つと述べています。聖霊はまた、聖化する存在であり、被造物を満たす一方で、唯一の存在であるともされ、豊かで満ち溢れた賜物を提供します。

聖霊論の歴史

聖霊論の歴史は多岐に渡ります。
教父時代には、アタナシオスの『セラピオンへの手紙』やバシレイオス、アンブロシウスによる論文が主要な文献として名を馳せました。特に2世紀のモンタノス主義では、聖霊の降誕と終末について強調されました。アウグスティヌスは、信者の生活と聖霊との関連性を深く考察し、聖霊によって導かれる神の愛が信者の生き方に影響を与えると主張しました。

宗教改革の時代に入ると、ルターは聖霊が福音を通じて信仰を生む重要な働きを担っているとし、カルヴァンは聖書の権威を聖霊によって証明しました。アナバプテストは聖霊の内なることばを強調しましたが、その結果として聖書を軽視したとされています。

現代において、カール・バルトは、聖霊論を教会論と結びつけて考察し、聖霊の業を通じて信者と教会が結びつくことを強調しました。19世紀末にはペンテコステ運動が広まり、1950年代にはカリスマ運動が起こりました。1990年代になると、聖霊の第三の波と呼ばれるムーブメントが現れ、今日に至るまで聖霊論に関する探求は続いています。

参考文献

• - 松木祐三「聖霊、聖霊論」『新キリスト教辞典』いのちのことば社、1991年
• - 小高毅, 「四世紀後半における聖霊論 : ディデュモス『聖霊論』を中心にして」『日本の神学』 1993巻 32号 1993年 p.24-44, 日本基督教学会

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