聖骸布

聖骸布（トリノの聖骸布）

聖骸布とは、キリスト教の聖遺物の一つであり、イエス・キリストの遺体が包まれた布として知られています。この布はトリノの聖ヨハネ大聖堂に保管されており、科学的調査や歴史的背景を通じて多くの議論を呼んでいます。

聖骸布の特徴

聖骸布は、長さ約4.41メートル、幅約1.13メートルの杉綾織の亜麻布です。布は生成りに近い象牙色をしており、その上に180センチほどの痩せた男性の全身像がネガ状に転写されているように見えます。この像は、イエス・キリストを模していると考えられています。特に頭部を中心に二つ折りにされて包まれていたと推測され、各所には血痕が残っています。

1532年にフランスのシャンベリで火災に遭った際、布の一部が損傷しました。その後、1534年に聖クララ修道会の修道女たちによって修復が行われ、1978年の調査では血液型がAB型であることが判明しました。さらに、2002年には修復作業の一環として継ぎ当てが外され、布の裏側には人物の姿は見られず、血のしみ込みが確認されています。

来歴

聖骸布の歴史は1353年に始まりますが、その経路は不明です。フランスのシャルニー家が所有していたところが発見され、その後、サヴォイア家へと所有権が移ります。1578年にはトリノへと移転され、教皇クレメンス7世はこれを神聖物とは認めず、特別な取り扱いを指示しました。

1898年には初めて聖骸布の写真が撮影され、1983年にはローマ教皇に所有権が引き渡され、その後トリノ大司教によって管理されることになります。一般公開はあまり行われておらず、聖骸布博物館でレプリカを鑑賞できますが、2000年や2010年には特別に一般公開が行われ注目を集めました。

聖書との関連性

聖骸布の全身像は、聖書の記述にさまざまに関連づけられています。例えば、イエスは顔を打たれ、鞭打たれ、茨の冠をかぶせられたことが示されており、これらの暴行の痕跡が布上に明らかに残っています。さらに、十字架につけられた際の釘の痕や、呼吸困難に関係する傷も確認されています。

聖骸布の真偽

聖骸布についてはその真偽が争点となっています。一方では、布がキリストの遺体を包んでいることを信じる意見がある一方、科学的調査によって中世のものであるとの指摘がされ、特に1988年に行われた放射性炭素年代測定では1260年から1390年頃のものであるとされました。この結果を受け、布の出所についての説も生まれましたが、検査方法や結果の信憑性に対しては異論も存在しています。特に、特定のバイオプラスティックが存在することが調査結果に影響を与えたとの指摘もあります。

また、聖骸布は通常の埋葬慣習に反する点が指摘され、像の人物が聖書時代の典型的な顔立ちからかけ離れているという意見もあるのです。これにより、聖骸布の真実性は今なお科学者や信者の間で議論の的となっています。

結論

聖骸布は、キリスト教の信仰において非常に重要な遺物とされ、多くの謎を抱えています。その由来や特徴、歴史的背景を理解することで、この神秘的な布が持つ意味をさらに深く探求することができるでしょう。

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