聚楽台

聚楽台（じゅらくだい）

かつて東京都台東区、JR上野駅前のシンボルの一つであった「西郷会館」の2階に位置し、1959年から2008年までの長きにわたり営業を続けた大衆レストランです。経営は株式会社聚楽が手掛けていました。和食、洋食、中華、さらには寿司まで、多岐にわたるジャンルの料理を提供しており、「何でもある」というそのスタイルは、現代のファミリーレストランの先駆けともいえる存在として多くの人々に親しまれました。

開業とその特徴

聚楽の創業者である加藤清二郎氏は、1924年に神田須田町で「須田町食堂」を開業するなど、すでに多くの飲食店経営で実績を積んでいました。しかし、聚楽台の開店にあたっては、当時の社内役員からの反対意見も多かったといいます。そうした逆風を押し切る形で、1959年に上野の地に開業しました。

店内は広々としており、タイル画による装飾や、滝を模した水流の演出が施されるなど、凝った内装が特徴でした。また、客席の一部には靴を脱いでくつろげる座敷席も設けられており、様々な客層に対応できる造りとなっていました。ドリンクメニューについても特筆すべき点があり、店内には1000リットルと500リットルという大容量の生ビールタンクが設置されていました。「工場直送生ビール」として大々的に宣伝され、新鮮な生ビールが楽しめることも大きな魅力の一つでした。

名物メニュー「西郷丼」

聚楽台のメニューの中でも、特に多くの人々に記憶されているのが「西郷丼」です。このユニークな名称は、店舗のすぐ裏手にある上野恩賜公園に立つ、あの有名な西郷隆盛像に由来しています。丼の上には、サツマイモの天ぷら、豚の角煮、薩摩揚げ、鶏そぼろ、ほうれん草、そして温泉卵といった、薩摩ゆかりの食材を中心に、多彩な具材が豪華に盛り付けられていました。まさに「西郷さん」を彷彿とさせる、ボリューム満点かつ栄養バランスにも配慮された一品として、長年愛され続けました。

閉店最終日には、この西郷丼に注文が殺到し、100食以上が出たため、炊飯する白米が足りなくなるほどの人気ぶりだったというエピソードが残っています。聚楽台は閉店しましたが、この西郷丼は現在もアメ横にある同系列の居酒屋「酒亭じゅらく」にて提供が続けられており、その味を楽しむことができます。

閉店の経緯

聚楽台が入居していた西郷会館は、建物の老朽化が進んでいました。これに伴う取り壊しが決定したため、聚楽台は2008年4月21日をもって惜しまれつつ閉店しました。約半世紀にわたるその歴史に幕を下ろしたのです。西郷会館の跡地には、新たな複合商業施設「UENO3153」が2012年9月に開業しました。聚楽側もこの新しい建物への再出店を視野に入れ、交渉が行われたそうですが、残念ながら条件面で折り合いがつかず、実現には至りませんでした。

多様なメニュー、ユニークな内装、そして地域に根差した名物メニュー「西郷丼」で、長年にわたり上野を訪れる多くの人々の胃袋を満たし、思い出を提供し続けた聚楽台。その名は消えましたが、その存在は上野の歴史の一部として、今も人々の記憶に残っています。

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