職業訓練 (受刑者等の作業)

刑事施設における職業訓練：更生支援と社会復帰への架け橋

日本の刑事施設では、受刑者の更生と社会復帰を支援する施策として、職業訓練が重要な役割を果たしています。本記事では、この職業訓練制度について、その根拠法令、訓練の種類、実施方法、対象となる受刑者、そして訓練を実施する施設について詳細に解説します。

法的根拠

職業訓練の法的根拠は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律（平成17年法律第50号）第94条第2項にあります。この法律は、受刑者に職業に必要な知識や技能を習得させる必要がある場合、職業訓練を作業として実施することを認めています。さらに、「受刑者等の作業に関する訓令」（法務省矯正訓第3327号）において、職業訓練の具体的な内容や実施方法が規定されています。

訓練の種類と内容

職業訓練は、大きく分けて「専門職業訓練」と「標準職業訓練」の2種類があります。

専門職業訓練

専門職業訓練は、職業に関する免許や資格の取得、または高度な職業的知識・技能の習得を目的とします。訓練内容は、矯正局長が定める職業訓練基準に沿ったもの、関係行政機関から養成施設として指定されたもの、そして刑事施設の長が特に必要と認めるものなど、多岐に渡ります。

標準職業訓練

標準職業訓練は、職業に必要な基礎的な知識・技能の習得を目的とします。訓練内容は、矯正局長が定める職業訓練基準に沿ったもの、または刑事施設の長が必要と認めるものから選択されます。

訓練の方法

職業訓練の実施方法は、大きく分けて以下の3種類があります。

総合訓練

複数の刑事施設から受刑者を集めて行う訓練で、専門的な知識・技能の習得を目的とした大規模な訓練です。

集合訓練

同一矯正管区内の複数の刑事施設から受刑者を集めて行う訓練で、地域的な連携を重視した訓練です。

自庁訓練

一つの刑事施設内の受刑者のみを対象に行う訓練で、施設の規模や特性に合わせた訓練が行われます。

訓練生選抜と修了

訓練生は、職業訓練を希望し、残刑期が訓練期間を満たし、健康状態が良好で、更生への意欲があり、適性検査に合格した受刑者の中から選抜されます。専門職業訓練を希望する受刑者は、受験資格も必要となります。訓練中に精神または身体の障害が生じた場合、または改善更生への意欲が欠如した場合などは、訓練が中止される場合があります。訓練修了者には、刑事施設の長から修了証書が授与されます。

職業訓練を実施する施設

職業訓練を実施する刑事施設は、必要に応じて「技能訓練所」の名称を用いる場合があります。訓練を担当する職員は、法務技官（作業専門官）で、技能士や職業訓練指導員免許などの資格・技能が求められます。

総合訓練施設

全国には、総合訓練施設として指定された施設があり、大規模な専門職業訓練を実施しています。（例：山形刑務所（出羽技能訓練所）、福井刑務所（足羽技能訓練所）など）

その他の施設

全国各地の多くの刑事施設が、それぞれの特性に応じた職業訓練を実施しています。（例：札幌刑務所（東栄技能訓練所）、東京拘置所（葛飾技能訓練所）など）

まとめ

刑事施設における職業訓練は、受刑者の更生と社会復帰を支援する上で極めて重要な役割を担っています。法令に基づいた制度設計と、訓練内容の多様化、そして施設間の連携強化によって、更なる効果の向上を目指していくことが求められます。

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