肝蛭

肝蛭について

肝蛭（かんてつ、カンテツ、学名：Fasciola spp.）は、蛭状吸虫科に属する寄生虫です。この寄生虫は、特にヒトにも感染することで知られていますが、一般的に「肝蛭」という場合、その中でも特にFasciola hepaticaを指すことが多いです。しかし、Fasciola giganticaや日本におけるFasciola spp.を含めた広義の意味で用いられることも少なくありません。

形態

肝蛭の成虫は、体長が約2〜3センチメートル、幅は約1センチメートルと比較的小さなサイズです。この小さな体躯で、宿主の肝臓などに寄生し、様々な影響を及ぼします。

分布

肝蛭は、ヨーロッパからオーストラリアにかけて広く分布しています。日本においては、本州以南での中間宿主はヒメモノアラガイが主に知られています。一方、北海道ではコシダカモノアラガイが中間宿主として機能しています。肝蛭はヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタ、さらには人間といった哺乳類の肝臓に寄生することが一般的です。人間が感染する経路は、クレソンやセリに付着したメタセルカリアを経口摂取すること、または牛などの肝臓を生食することが挙げられます。

生活環

肝蛭の生活環は非常に複雑です。まず、終宿主から排出された虫卵は水中でミラシジウムに成長します。このミラシジウムは中間宿主の体内に侵入し、スポロシストとして発育。その後、中腸腺でレジア、セルカリアに変化します。セルカリアは中間宿主の呼吸孔から外に出て、水草などに付着し、メタセルカリアとしての状態になります。

メタセルカリアは終宿主によって経口的に摂取され、空腸内で脱嚢し腸粘膜に侵入します。そこから、腸を突き抜け腹腔に達し、肝臓に取り付く幼虫に成長します。この幼虫は肝臓の実質内を進みながら成長し、最終的には総胆管に達します。ただし、幼虫は移行しやすく、時には子宮や気管支に移行することもあるため、注意が必要です。成虫は感染後約70日間で総胆管内で産卵を行い、産卵された虫卵は消化管を通じて糞便と共に排泄され、水中で新たなサイクルを開始します。

肝蛭症

肝蛭が寄生することによって引き起こされる病工のことを肝蛭症と言います。この病態は、肝臓において肝硬変の原因となることがある他、肝蛭が体内の他の部位へ移動した場合には、そこで特有の病状や症状を引き起こすこともあります。肝蛭症に感染した場合、適切な治療を施さなければならないため、早期発見が重要です。

まとめ

肝蛭は、宿主の肝臓に寄生し、さまざまな健康問題を引き起こす可能性がある寄生虫です。特に感染経路や生活サイクルを理解することで、その予防と治療を効果的に行うことが可能です。自身や周囲の健康管理のためにも、肝蛭に関する知識を深めることが重要です。

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参考文献：石井敏雄 『獣医寄生虫学・寄生虫病学 (2) 蠕虫 他』 講談社サイエンティフィク 1998年 ISBN 4061537172

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