肥の豊

肥の豊：熊本が生んだ、甘さと酸味のバランスが魅力の柑橘

「肥の豊（ひのゆたか）」は、熊本県で開発されたミカンとオレンジを掛け合わせたタンゴールの一種です。既存の主力品種である「シラヌヒ」の課題を克服するために、長年の研究の成果として誕生しました。

開発の背景：シラヌヒの限界と新たな品種への期待

2000年頃、熊本県の柑橘栽培においては、主力品種である「シラヌヒ」のいくつかの問題点が顕在化していました。樹勢が弱く、収穫量が少ない上に、成熟が遅く酸味の強い果実が多かったのです。より栽培しやすく、収穫時期が早く、そして何よりも美味しい柑橘の開発が強く求められていました。

そこで、熊本県農業研究センター果樹研究所は品種改良に乗り出しました。「シラヌヒ」と、早生で優れた風味を持つことで知られる「マーコット」を交配。多くの実生の中から、選抜と育成を繰り返すことで、理想的な品種が誕生しました。それが「肥の豊」です。2003年3月には品種登録が完了し、本格的な栽培が始まりました。

肥の豊の特徴：早生で樹勢が強く、バランスの良い味わい

「肥の豊」は、他の柑橘と比べていくつかの優れた特徴を持っています。まず、樹勢が非常に強い点が挙げられます。葉は大きく、新芽は力強く伸び、大きな棘も見られます。そのため、樹冠が早く広がり、効率的な栽培が可能です。

果実の大きさは270～300グラムと、食べ応えのあるサイズです。着色時期は「シラヌヒ」と同時期か、やや早い傾向があります。果皮は滑らかで、見た目も美しいです。

そして何よりも重要なのはその味です。12月下旬に収穫された果実を1月中旬に分析した結果、糖度は14～12.5度、酸度は1.2～1.4％という結果が得られました。甘さと酸味のバランスが良く、爽やかな風味は多くの人々を魅了します。

生産状況と今後の展望：熊本県を代表する柑橘へ

「肥の豊」は、現在、熊本県においてのみ生産されています。2010年の収穫量は1,966トンに達しており、その生産量は着実に増加しています。

熊本県農業研究センター果樹研究所は、今後も「肥の豊」のさらなる改良や、新たな柑橘品種の開発に積極的に取り組んでいく予定です。将来的には、熊本県を代表する柑橘として、全国的な知名度と人気を獲得することが期待されています。 その優れた品質と栽培の容易さから、「肥の豊」は、今後ますます注目を集める柑橘品種となるでしょう。

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