背中あわせのランデブー

シンガーソングライター太田裕美によって1978年に発表されたスタジオアルバム、『背中あわせのランデブー』は、彼女にとって通算7作目にあたります。後に1991年にはCDとしても再リリースされ、長きにわたり聴かれ続けています。

本作の大きな特徴は、そのユニークな構成がタイトル「背中あわせ」に色濃く反映されている点です。LP盤としてリリースされた当時のA面には、すべての楽曲の作曲を著名なアーティストである吉田拓郎が担当し、編曲を鈴木茂が手がけました。対照的に、B面ではすべての楽曲の作詞・作曲を太田裕美自身が行い、編曲は萩田光雄が担当しています。このように、アルバムの一方と他方で異なるクリエイターが中心となって楽曲を生み出している様が、「背中あわせ」という言葉で表現されました。さらに、アルバムのジャケットデザインも、同じベンチに座りながら互いに背中を向け合っている太田裕美自身の写真が用いられており、視覚的にもタイトルのコンセプトを強調しています。

実は、このアルバムは当初、前年の1977年内に発表される予定でした。しかし、当時の太田裕美が喉を痛めてしまったため、制作および発売時期が延期されることとなり、結果的に1978年のリリースとなりました。そうした経緯を経て世に送り出された本作は、リスナーからの高い評価を得て、オリコンチャートでは最高位3位を記録するヒットとなりました。

『背中あわせのランデブー』に収録されている楽曲は、前述のようにA面とB面で大きく性格を異にしています。

A面に収められた楽曲はすべて、吉田拓郎が作曲、鈴木茂が編曲を手がけています。
失恋魔術師
この曲は、アルバム発表後にアレンジなどが新たに加えられ、太田裕美にとって11枚目のシングルとして改めてリリースされました。作詞は松本隆です。
花吹雪
作詞は松本隆です。
鍵
作詞は松本隆です。
朝（あした）、春になあれ
作詞は小林倫博です。
ONE MORE CHANCE
作詞は小林倫博です。

B面には、太田裕美自身が作詞・作曲を手がけ、萩田光雄が編曲を担当した楽曲が収められています。
走馬燈
Moon Night Selenade
一人ぼっちの海
白い朝
クロスワード・パズル
* あなたに･･････

B面の楽曲群は、太田裕美自身の内面や世界観がより直接的に表現されたものと言えるでしょう。

このアルバムは、吉田拓郎という外部の才能との協業によるA面と、太田裕美自身のクリエイティビティが光るB面という、「背中あわせ」の構成が見事に結実した作品です。それぞれの面が持つ異なる魅力が、聴く者に豊かな音楽体験を提供します。発売延期というアクシデントを乗り越え、ヒットを記録した『背中あわせのランデブー』は、太田裕美のディスコグラフィーにおいて、その独自のコンセプトと音楽性によって特筆されるべきアルバムと言えるでしょう。

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