胞巣状軟部肉腫

胞巣状軟部肉腫（Alveolar Soft Part Sarcoma）について

胞巣状軟部肉腫（ASPS）は、軟部組織に発生する悪性の腫瘍の一種です。この腫瘍は非常に稀で、悪性軟部腫瘍の中でも全体の0.5%から0.9%程度を占めるとされています。具体的には、人口100万人に対して年間おおよそ30例の悪性骨・軟部腫瘍が報告されていますので、胞巣状軟部肉腫になる確率は人口1000万人に対してわずか1.5から3.0人と非常に低いのが特徴です。

この腫瘍は、2002年に発表されたWHOの分類においては「分化不明の軟部腫瘍」の一部に含まれています。最初にこの腫瘍について提唱したのは、ニューヨークにあるスローン・ケタリング癌センターの病理医W.M. Christophersonです。1952年に発表された彼の研究では、ASPSはその特異な病理形態から注目されましたが、腫瘍の発生起源については依然として不明のままです。

胞巣状軟部肉腫についての研究は、特にその分化に関する議論が続いています。いくつかの研究者は、この腫瘍が横紋筋原性または横紋筋細胞に分化する可能性を主張していますが、一方でそれに反対する意見も根強く存在します。免疫組織化学染色の結果では、筋細胞特有の中間径フィラメントであるデスミンが陽性である一方で、MyoDやmyogeninが陰性であるという報告もあるため、横紋筋細胞への分化は否定的とされているのが現状です（Weiss SW, 2002）。

この腫瘍の治療には、外科的切除が一般的ですが、その希少性から、有効な治療法や予後の情報が限られています。研究者や医療専門家は、この腫瘍についての理解を深めるために多くの努力をしています。

現在でもASPSに関する研究は続けられており、腫瘍の発生原因やその特性の解明が期待されています。医療機関での診断や治療の向上も重要ですが、それにはより多くの患者や症例のデータ収集が求められます。今後、胞巣状軟部肉腫に関する新たな知見が得られれば、より効果的な治療や患者ケアが実現する可能性があるでしょう。

参考文献

1. Christopherson WM, Foote FW, Stewart FW: Alveolar soft part sarcomas: structurally characteristic tumors of uncertain histogenesis. Cancer 1952;5:100–111.
2. Fletcher CDM, Unni K, Mertens K, (ed.): Pathology and Genetics of Tumours of Soft Tissues and Bone. IARCPress, 2002. ISBN 9283224132
3. Weiss SW: Alveolar soft part sarcoma. Are we at the end or just the beginning of our quest? Am J Pathol 2002:160;1197-1199.

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