中間径フィラメント

中間径フィラメントとは

中間径フィラメントは、細胞骨格を構成する3種類の繊維の一つで、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの中間の太さを持つことから名付けられました。その直径は約10nmです。細胞内で重要な役割を果たしており、特に細胞の構造的な強度を支える上で不可欠です。

構造と特徴

中間径フィラメントは、他の細胞との結合を形成し、組織全体の強度を高める役割も担っています。具体的には、デスモソームという構造を介して他の細胞と結合し、組織を強固に保ちます。また、核膜の補強にも関与しており、核ラミナと呼ばれる構造を形成して核を保護します。細胞骨格を構成する他の繊維と比較して、最も丈夫で、溶解しにくいという特徴があります。

中間径フィラメントの種類

中間径フィラメントには、様々な種類が存在し、細胞の種類によって発現するものが異なります。この細胞特異性が、組織の識別や病理診断において重要な意味を持ちます。

代表的な中間径フィラメントの種類:

ケラチンフィラメント
ニューロフィラメント
デスミン
ビメンチン
神経膠細線維性酸性タンパク質（GFAP）

中間径フィラメントは、さらにTypeⅠからTypeⅥに分類されます。

TypeⅠ：酸性ケラチン
TypeⅡ：塩基性ケラチン
TypeⅢ：ビメンチン、デスミン、GFAP、ベリフェリン
TypeⅣ：ニューロフィラメント
TypeⅤ：ラミン
TypeⅥ：ネスチン

分子構造

中間径フィラメントを構成するタンパク質は、N末端とC末端に球状構造を持ち、分子の中央部分にはより合わせコイル構造が見られます。球状構造は他のタンパク質との相互作用に関与し、より合わせコイルは2つのタンパク質が結合して安定な構造を形成します。この二量体がさらに結合し、四量体を形成。それらが集まってフィラメントを形成します。

医学領域での応用

中間径フィラメントの細胞特異性は、病理診断において非常に有用です。比較的良く分化された腫瘍は、元となった組織の中間径フィラメントの特性を保持していることが多いため、酵素抗体法を用いた免疫染色によって組織型を鑑別することができます。例えば、癌腫は一般的にケラチンを発現し、間葉系の腫瘍はビメンチンを発現する傾向があります。

ただし、分化度の低い悪性腫瘍では、中間径フィラメントに変異が生じている場合があり、診断が困難になることもあります。癌腫の分化度が低下すると、ケラチンの発現が弱まり、ビメンチンの発現が見られるようになることがあります。また、非上皮性腫瘍であってもケラチンが発現することがあるため、複数のマーカーを組み合わせて診断を行う必要があります。

このように、中間径フィラメントは、細胞の構造を支えるだけでなく、医学分野においても重要な役割を果たしています。

参考資料

中間径フィラメント - 脳科学辞典

もう一度検索