胡以晃

胡以晃（こ いこう、Hu Yihuang、1812年 - 1856年）は、19世紀中頃に中国で起こった太平天国の重要な指導者の一人です。彼は豫王（よおう）の称号を与えられ、その軍事的才能と献身的な活動で知られています。

胡以晃は広西省潯州府平南県の裕福な家庭に生まれました。幼少期から武術に秀でており、武秀才（科挙の武科の合格者）の地位を得ています。しかし、彼は伝統的な官僚の道を選ばず、キリスト教の影響を受けた拝上帝会（はいじょうていかい）に入会し、その教えに深く傾倒しました。彼の信仰は非常に強く、家産を売却して得た多額の資金を拝上帝会に寄付するなど、献身的な行動を取りました。

1851年に金田蜂起（きんでんほうき）が起こると、胡以晃は太平天国の革命運動に積極的に参加します。彼はその卓越した能力から、春官正丞相（しゅんかんせいじょうしょう）という要職に任命されました。この地位は、太平天国の官僚機構において重要な役割を担っており、胡以晃の組織運営能力の高さが伺えます。

1853年に太平天国が南京を天京（てんきょう）と改名し、首都を定めた後、胡以晃は頼漢英（らいかんえい）と共に西征（せいせい）軍の指揮を任されます。彼は約千隻の軍艦と二万の兵士を率いて西に向かい、太平天国の勢力拡大に貢献しました。まず、安慶（あんけい）を再征服し、その後、江西省の南昌（なんしょう）を包囲しましたが、この都市の攻略には失敗しています。

南昌攻略の失敗後、胡以晃は軍を二分し、自らの部隊を率いて安徽省（あんきしょう）へと侵攻します。1854年1月には廬州（ろしゅう）を陥落させ、この戦いで清朝の安徽巡撫（あんきじゅんぶ）であった江忠源（こうちゅうげん）は自殺に追い込まれました。この勝利により、太平天国は安徽省における支配を確立し、胡以晃の軍事的才能は高く評価されました。

同年、胡以晃はその功績により豫王に封ぜられました。しかし、彼の活躍は長くは続きませんでした。1856年、江西省での作戦中に病に倒れ、そのまま亡くなりました。彼の死は太平天国にとって大きな損失であり、その後の太平天国の衰退の一因ともなりました。

胡以晃は、武人としての才能だけでなく、信仰心と組織運営能力にも優れていました。彼は太平天国運動の初期における重要な人物の一人であり、その活動は中国の歴史に大きな影響を与えました。

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