金田蜂起

金田蜂起：太平天国への序章

金田蜂起は、19世紀半ばの中国で起きた太平天国の乱の端緒となった武装蜂起です。この蜂起は、洪秀全が創始した拝上帝教を基盤とし、広西省桂平県金田村で勃発しました。その背景には、社会不安と宗教的な熱狂が複雑に絡み合っていました。

拝上帝教の成立と広西省での拡大

1843年、洪秀全は馮雲山、洪仁玕と共に、広東省で拝上帝教を組織しました。翌年春からは、広西省で布教活動を開始。洪秀全が宗教理論の構築に専念する間、馮雲山は広西省奥地の紫荊山地区で、民衆を組織し拝上帝会を拡大しました。楊秀清や蕭朝貴といった指導者が加わり、組織は急速に拡大しました。1849年前後の広西省は、度重なる天災に見舞われ、さらに天地会の蜂起が頻発。社会不安が増大し、民衆は新たな指導者を求めていました。

金田村での蜂起準備

1850年7月、洪秀全は総動員令を発し、金田村に信徒を集結させました。彼らは軍事訓練を受け、組織的な軍隊として編成されました。軍隊は、師帥、旅帥、卒長、両司馬、伍長という階級構造を持ち、それぞれの指揮系統が明確に定められました。集結した人数は、7月末までに13,155人に達しました。当時の広西省の清朝軍は、人員不足と天地会の鎮圧に追われており、拝上帝会の組織化を見過ごしていました。

蜂起と初期の戦い

清朝軍が異変に気づいたときには、時すでに遅しでした。12月、清軍は洪秀全の邸宅を包囲しましたが、楊秀清の援軍により撃退されました。1851年1月1日には、清軍が金田村への攻撃を開始しましたが、拝上帝会は待ち伏せしており、清軍を破り、指揮官イクタムブを討ち取りました。これらの勝利は、拝上帝会の士気を大いに高めました。

1851年1月11日、拝上帝会は金田村で正式に蜂起。国号を「太平天国」と定め、辮髪を切り、服装を改めました。また、軍紀5ヶ条を定め、略奪を禁じ、規律を重視しました。3日後には大湟江口を占領し、天地会も合流。太平天国の勢力は拡大しました。

清朝軍との激戦

清朝は、欽差大臣李星沅を派遣し、広西提督向栄に2千の兵を与え、貴州省からも援軍を呼び寄せました。向栄は2月18日に大湟江口を攻撃しましたが、待ち伏せに遭い、包囲作戦に切り替えざるを得ませんでした。3月10日には、太平天国軍は武宣に撤退し、清軍の追撃をかわしました。4月3日には、広西巡撫周天爵と向栄が6千の兵で攻撃しましたが、再び敗北を喫しました。5月16日、太平天国軍は包囲を突破し、象州へと進軍しました。清朝は、広州副都統ウランタイを新たに派遣し、向栄と共に太平天国軍の北上を阻止しようとしました。

蜂起の挫折と再編

梁山村の北の独鰲嶺の戦いでは、ウランタイが優位に立ち、7月末までに太平天国軍は、根拠地である桂平県紫荊山への撤退を余儀なくされました。北上計画は失敗に終わりましたが、この撤退中に多くの民衆が太平天国軍に加わり、勢力を増強しました。ここから、太平天国軍は新たな進撃を開始することになるのです。

歴史的意義

金田蜂起は、太平天国の乱の始まりであり、清朝を揺るがす大規模な反乱の狼煙となりました。この蜂起は、中国社会の変革を求める民衆のエネルギーを示しており、その後の歴史に大きな影響を与えました。現在、北京の天安門広場にある人民英雄紀念碑には、金田蜂起を称えるレリーフが刻まれています。

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