胡善祥

胡善祥（こ ぜんしょう）は、明の時代、宣徳帝の最初の皇后であり、その生涯は栄光と失意に満ちたものでした。諡号は恭譲皇后（きょうじょうこうごう）です。

生い立ちと初期のキャリア

胡善祥は済寧府の出身で、父は胡栄、母は劉氏です。彼女には姉が二人おり、長姉の胡善圍は尚宮（女官）として宮廷に仕え、父の胡栄も錦衣衛の役人として仕えていました。しかし、建文帝の即位に伴い、胡栄は官職を免じられました。

皇太子妃、そして皇后へ

永楽15年（1417年）、胡善祥は永楽帝にその美貌と賢明さを見出され、皇太孫である朱瞻基（後の宣徳帝）の妃（正室）として迎えられました。しかし、朱瞻基は別の妃である孫氏を寵愛し、胡善祥はあまり顧みられることがありませんでした。洪熙帝が即位すると、彼女は皇太子妃に立てられ、さらに宣徳帝が即位すると、皇后として迎えられました。

廃后と晩年

宣徳3年（1428年）、宣徳帝の寵愛を受けていた貴妃孫氏が男子、後の英宗となる朱祁鎮を産みました。一方、胡善祥は病を抱えており、男子を産むことができなかったため、皇后の地位を廃され、清寧宮に移されました。彼女は皇后としての待遇は受けましたが、道士とされ、「静慈仙師」という法号を与えられました。その後、孫氏が皇后に立てられることとなりました。しかし、姑である張太后は胡善祥を深く憐れみ、度々自身の居所に招き、慰めました。

英宗の時代に入り、正統6年（1441年）に父の胡栄が死去し、翌年には張太后も崩御しました。張太后の葬儀では、胡善祥は他の妃嬪と共に配列され、さらに正統8年（1443年）には、娘である順徳長公主も子供をもうけることなく亡くなりました。胡善祥はその後間もなく、静かにその生涯を閉じました。

死後の名誉回復

胡善祥は亡くなった後、当初は嬪の礼で金山に葬られましたが、英宗の天順年間には、恭譲誠順康穆静慈章皇后という長い諡号が贈られ、皇后の礼をもって改葬されました。彼女の死後、その功績と人となりが再評価されたのです。

子女

胡善祥には二人の娘がいました。

順徳公主 - 石璟に降嫁しました。
永清公主 - 若くして亡くなりました。

伝記資料

胡善祥に関する資料としては、『明史』、『明宣宗実録』、『明英宗実録』などが挙げられます。これらの史料を通じて、彼女の生涯を詳しく知ることができます。

胡善祥の生涯は、明の宮廷における女性の運命と権力闘争を映し出す鏡のような存在です。彼女は一度は皇后の座に上り詰めたものの、男子を産むことができなかったために廃后となり、晩年は静かに過ごしました。しかし、その死後には、皇后としての名誉が回復され、その生涯は歴史に刻まれることとなりました。

もう一度検索