胴斬り

胴斬り（どうぎり）

古典落語の演目『胴斬り』は、日本の伝統的なユーモアを渉猟する滑稽噺です。その起源は宝永2年（1705年）に発行された笑話本『軽口あられ酒』の一篇、『喧嘩胴切』に遡ります。この作品には現在私たちが知るサゲは含まれていませんが、後の時代の落語家たちによって新たな結末が追加されました。

あらすじ

物語はある酔っ払いの男が夜道を歩くところから始まります。彼は侍と出会い、無謀にも喧嘩を挑みます。激怒した侍は男の胴を一刀で斬りつけますが、その技は驚くほど見事で、男の命はなんとか助かります。この斬撃により、男の胴体は上下に分かれてしまうのです。上半身は天水桶の上に乗ったまま。どうしても元の姿に戻れない男は、困惑するしかありません。

そんな彼を助けてくれたのは、偶然通りかかった兄貴分。状況を聞いた彼は男を助け、無事に家へと連れ帰ります。翌日、兄貴分が男の家を訪れると、胴体がしっかりご飯を食べているのを見て驚くと同時に、足は家の周りで活発に跳ね回っているのに気づきます。男は元は大工でしたので、このような身体ではもはや仕事を続けることができないと嘆くのです。

すると兄貴分は彼のために新たな職を探し出します。その仕事は銭湯の番台です。胴体は自由に動かなくても大丈夫で、足は蒟蒻屋で蒟蒻玉を踏む仕事をすることになりました。こうして、この不思議な身体の男はそれぞれの特技を生かした仕事で活躍できるようになり、雇った主人たちからも感謝されるようになります。

しかし、しばらくして兄貴分は銭湯にいる胴体を訪ねます。胴体は「目が霞んでしまってどうしようもないので、三里の灸を足に頼んでお願いしてほしい」と伝えます。兄貴分はこれを受けて足の元へ行き、彼のお願いも引き受けてくれるよう篤く頼みます。

すると足は快く引き受けたものの、今度は「その際、胴体に注意してほしいことがある。あまり湯茶を飲まないように言ってくれ。小便が近くて困っているから」と伝えてほしいと頼みます。このように、二体の男はそれぞれに意志を持ち、互いに助け合う姿がユーモアたっぷりに描かれています。

『胴斬り』の魅力は、意外性に満ちたストーリー展開や笑いを誘うサゲにありますが、同時に人々がどんな状況にあっても工夫して生きていく姿を描いている点にあるでしょう。古典落語としての特徴を残しつつ、ユニークなキャラクターとストーリーは、今もなお多くの人々に親しまれています。

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