左美濃

左美濃：柔軟性と多様性を兼ね備えた居飛車戦法

左美濃は、将棋の居飛車戦法において用いられる囲いのひとつです。美濃囲いを左右反転させた形から、玉が8筋に位置する特徴があります。この独特の陣形は、持久戦から急戦まで柔軟に対応できる点が大きな魅力であり、初心者からプロ棋士まで幅広い層に支持されています。

左美濃の特徴：多様な攻めと堅実な守りの両立

左美濃は、攻めと守りのバランスに優れた囲いです。他の振り飛車対策の持久戦法と比較すると、藤井システムや石田流といった積極的な振り飛車戦法に対して、極端に不利になるケースが少ない点が強みです。プロ棋戦においては、持久戦に自信がない際の控えの戦法として、アマチュアトップクラスでは流行している振り飛車対策として、リスクを抑えながら戦う手段として重宝されています。

左美濃のバリエーション：様々な玉の配置と戦術

左美濃には様々なバリエーションが存在します。代表的なものとして以下が挙げられます。

8八玉型: 角行を7七に上げて、玉を8八に構える最も基本的な形です。かつては主流でしたが、△6五桂の攻めや、5九角の引き角による弱点も存在します。現在では、居飛車穴熊を断念した場合などに用いられることがあります。
天守閣美濃: 玉を8七に構える珍しい形。右辺からの攻撃には強いものの、玉頭が非常に弱いため、藤井システムなどの対策が有効です。歴史的には古くから存在したアイデアであり、江戸時代の棋譜にもその原型が見られます。
四枚美濃: 天守閣美濃に右銀を加えた、より堅固な形です。
左銀冠: 四枚美濃から発展した、左美濃の最終形。振り飛車穴熊対策としてよく用いられます。
米長玉型: 玉を9八に置く形。角筋への攻撃を避け、安定性を重視した形です。
端美濃: 玉を9八に置くもう一つのバリエーション。串カツ[[囲い]]の途中の形とも考えられます。
平美濃: 角道を開けずに組む形。藤井システムなどの上部からの攻めを緩和する効果があります。
角道不突美濃: 先手中飛車に対して後手番で用いられる、角道を序盤で開けない作戦。角行の活用は、タイミングを見て角道を活用したり、端から活用したりします。
升田美濃: 角道を開けて角行を居角もしくは7七角に構える形。相居飛車戦で用いられ、1950年代に木村義雄の相居飛車5筋交換型作戦に対抗するために升田幸三によって編み出されました。
一段玉型: 玉を8九に置く形。角筋に玉が入ってこないメリットがあります。
金美濃: 藤井システムの登場以降、居飛車穴熊へのスムーズな移行を図るために用いられるようになった形。穴熊以外にも、6筋位取りや串カツ[[囲い]]に組み替えることも可能です。

左美濃の攻め：多様な選択肢と柔軟な対応

左美濃からの攻めは、囲いのバリエーションに応じて多様な選択肢があります。

右4六銀との組み合わせ: 天守閣美濃など、振り飛車側と互角の堅さを持つ囲いから、各種急戦を仕掛けることができます。
引き角と組み合わせた右辺攻撃: 4枚美濃などで効果的な戦法。
5筋位取り引き角型との組み合わせ: 藤井システムに対して有効な、布陣の組み替え戦術。
腰掛け銀・右[[四間飛車]]との組み合わせ: 右[[四間飛車]]との相性が良い戦法。
三手角または四手角: 角道を早く閉じる展開になった際に用いる、角を2六にもっていく戦術。
銀冠への変化: 左美濃から銀冠に変化し、持久戦に持ち込むことも可能です。居飛車穴熊への移行も可能です。
玉頭位取り・穴熊への変化: 穴熊対策として有効な戦術。
角道クローズ左美濃: 先手中飛車に対して、後手番で用いられる作戦。角道を突かないことで、相手の攻めを抑制します。

左美濃に対する対策：Uターン飛車など

左美濃に対する対策として、Uターン飛車などが挙げられます。これは、振り飛車側が一度振った飛車を振り戻し、居飛車に転じる戦法です。他にも、玉頭攻めや様々な振り飛車戦法が用いられます。

左美濃の歴史：江戸時代からの歴史と現代将棋への発展

左美濃は江戸時代から存在する古くからの戦法です。相居飛車戦において、特に後手番で多く用いられていました。その後、現代将棋においても、様々なバリエーションが開発され、矢倉戦などでも用いられるようになっています。特に、急戦矢倉への対策として、居角左美濃急戦といった戦法も登場しています。

参考文献

勝又清和、『消えた戦法の謎』
中田宏樹、『対矢倉左美濃作戦』
原田泰夫（監修）、荒木一郎（プロデュース）、森内俊之ら（編）、『日本将棋用語事典』
森下卓、『将棋基本戦法 振り飛車編』
湯川博士、『振り飛車党列伝』

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