脇田稔

脇田 稔（わきた みのる）氏は、1943年に生まれた日本の地方公務員として、長きにわたり故郷である鹿児島県の行政を支えました。そのキャリアは、地方自治体における専門性と献身を示す典型とも言えるでしょう。

脇田氏は鹿児島県立甲南高等学校を卒業後、鹿児島大学文理学部で研鑽を積み、学士号を取得しました。大学卒業後の1966年（昭和41年）、故郷の発展に貢献することを志し、鹿児島県庁の門を叩きます。ここから約40年にわたる公務員としてのキャリアが始まりました。

県庁に入庁後、様々な部署を経験し、行政実務の知識と経験を深めていきました。県の顔とも言える東京事務所長として、首都圏における県のPRや情報収集、関係機関との連携強化に努めた時期もありました。こうした幅広い経験が、その後の要職につながる基盤となりました。

特に重要なポストとしては、農政部長、教育長、そして副知事が挙げられます。1996年（平成8年）10月には、当時の松本浩二氏の後任として農政部長に就任しました。鹿児島県は豊かな自然と農業資源に恵まれた地域であり、農政部門は県政の中でも特に重要な分野の一つです。農政部長として、地域農業の振興や活性化、食の安全安心の確保など、多岐にわたる課題に取り組みました。

続く2000年（平成12年）4月には、徳田穰氏の後任として鹿児島県教育委員会の教育長に就任します。教育長は、県の教育行政の最高責任者として、学校教育、社会教育、文化、スポーツなど、幅広い分野にわたる政策の企画・実施を指揮する重要な役割を担います。未来を担う子どもたちの育成環境整備や、生涯学習の機会提供など、教育水準の向上と地域社会の発展に貢献しました。

2002年（平成14年）6月には、当時の高田守國氏が辞意を表明し空席となっていた副知事のポストに就任しました。副知事は、知事を補佐し、県政の重要施策の企画・立案、各部局間の調整、対外的な折衝などを行う、まさに県政運営の中枢を担う要職です。知事と連携しながら、県の抱える様々な課題、例えば財政再建、少子高齢化対策、産業振興、地域振興などに対して、具体的な政策推進に力を尽くしました。約4年間の在任期間中、安定した行政運営に貢献し、その手腕を発揮しました。2006年（平成18年）3月、副知事を辞職し、後任は仮屋基美氏が務めました。

県庁での公職を退いた後も、脇田氏の活動は続きました。2006年（平成18年）4月には、国立大学法人鹿児島大学の監事に就任しました。大学の監事は、法人の業務および財産の状況を監査する役割を担い、大学運営の透明性や適正性を確保する上で極めて重要です。大学改革が進む中で、その豊富な行政経験を活かし、大学の健全な経営と発展に寄与しました。この監事の職務は、2008年（平成20年）3月の任期満了をもって退任しました。

その後、脇田氏は鹿児島県立図書館の館長に就任しました。県立図書館は、県民に対する知の拠点として、資料の収集・保存・提供だけでなく、読書活動の推進や文化振興にも重要な役割を果たしています。館長として、より多くの県民が利用しやすい図書館サービスの提供や、地域の文化・教育活動との連携強化などに取り組みました。

長年にわたる地方行政への貢献が認められ、2013年（平成25年）春の叙勲において、地方行政事務功労により瑞宝中綬章を受章しました。瑞宝章は、公務等に長年にわたり従事し成績を挙げた者に授与される勲章であり、その中でも瑞宝中綬章は特に顕著な功績を挙げた者に贈られます。この受章は、脇田氏が鹿児島県の発展のために捧げた長い年月と、その貢献がいかに評価されたかを物語っています。

公務以外では、鹿児島県ソフトテニス連盟の会長も務めました。スポーツ振興にも関心を寄せ、地域におけるソフトテニスの普及・発展に尽力した側面も持ち合わせています。

脇田稔氏は、鹿児島県庁で多様なポストを歴任し、農政、教育、県政全般にわたる重要施策の推進に深く関わりました。退職後も大学や文化施設の運営に携わるなど、生涯を通じて故郷への貢献を続けた人物と言えます。そのキャリアは、地方公務員が地域の発展に果たす役割の大きさを改めて示しています。

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