脱窒

脱窒とは

脱窒（だっちつ）とは、窒素化合物を分子状の窒素として大気中に放出する作用または過程を指します。このプロセスは窒素循環の最終段階とされ、主に微生物の活動によって行われます。現代農業においては、無機窒素塩類が化学肥料として頻繁に使用されていますが、それが土壌に残留し地下水を汚染するのを防ぐ役割も担っています。

脱窒の環境への影響

例えば、硝酸は土壌中では陰イオンとして存在し、土壌成分と反応しやすく、降雨により地下水に浸透しやすい性質を持っています。アメリカのイリノイ州デカトール市では、1960年代にこの浸透過程が証明され、水質汚濁の主要因として認識されるようになりました。日本でも、硝酸性十分な水質の規制は水質汚濁防止法によって管理されています。

さらに、排出された窒素酸化物は大気汚染の原因とされ、土壌や水系に降下した後、この脱窒作用を通じて減少します。

脱窒菌とその役割

さまざまな脱窒菌が知られていますが、中でも硝酸還元菌として知られるPseudomonas denitrificansは重要な脱窒菌です。この他にもParacoccus d.、Thiobacillus d.などの種が確認されています。これらの細菌は、酸素の有無に応じて代謝方法を切り替え、脱窒の過程を進行させます。

通性嫌気性従属栄養細菌は、酸素が存在する場合には好気呼吸を行い、酸素が不足すると嫌気呼吸に移行します。この際、硝酸イオンが存在すると、それを利用することでより効率的にエネルギーを生成することができます。これによって、硝酸還元菌は他の微生物との競争において優位性を保つことができるのです。

脱窒菌は生成した亜硝酸イオンを用いて脱窒のプロセスを進行させ、土壌や水系での窒素除去に寄与しています。一方で、腸内細菌などの一部の細菌は、亜硝酸を還元する際にアンモニアに変えてしまう非脱窒型の代謝を行います。

脱窒の応用

環境工学の分野では、主に水中の生物学的な窒素除去に脱窒プロセスが利用されています。活性汚泥法などの廃水処理法では、好気的微生物によって有機物が酸化され、硝化と脱窒の工程を組み合わせることで、高効率な窒素クリーニングが可能となります。

注意が必要なのは、脱窒の反応は酸素濃度が低い環境で進行するもので、酸素濃度が高いと進行しにくくなることです。そのため、実際の処理装置では脱窒菌が共存し、異なる酸素濃度環境でも機能するよう工夫がされています。観察としては、電位を測定し、反応の進行具合を評価します。

また、メタノールなどの有機物を補給することでも脱窒の反応効率を向上させることができ、その際の反応方程式も研究されています。

同化による窒素除去

さらには、脱窒菌による窒素除去の他に、生体によって同化代謝による窒素除去を試みる方法もあります。特に富栄養化が進行している水域では、成長が早い水草を植えることで成長を促進し、繰り返し収穫する方法が提案されています。
あるいは、余剰の活性汚泥を引き抜くことで窒素を除去することも可能です。

様々なアプローチで進行している脱窒及び窒素除去システムですが、微生物の存在や代謝の理解は今後の環境技術においてますます重要な要素となっていくでしょう。

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