脳性ナトリウム利尿ペプチド

脳性ナトリウム利尿ペプチド（BNP）



脳性ナトリウム利尿ペプチド（BNP）は、心臓の心室から生成されるホルモンです。このホルモンは、体内の水分及びナトリウムのバランスを調整する役割を担っており、特に心臓の機能において重要な役割を果たします。BNPは利尿作用を有しており、心不全の治療に用いられる医薬品、特にネプリライシン阻害薬（ARNI）としての利用が進められています。このような治療法は、心不全の進行を抑制するために用いられます。

BNPの診断的意義



BNPは、血中濃度を測定することで心不全の有無を判断する指標として重視されています。健康な人におけるBNPの基準値は18pg/mL以下とされており、この値を上回ると心疾患リスクが高まっている可能性が考えられます。心不全のスクリーニングにおいては、50pg/mLや100pg/mLを閾値とする意見もあり、特に22pg/mLをカットオフとする場合、感度97%、特異度84%という非常に高い診断精度が示されています。

急性心不全のケースでは、BNPが100ng/L（pg/mL）を超えると、感度が95%、特異度が63%といった結果が報告されています。このように、BNP値は心不全の診断やその後の経過観察において非常に重要です。心血管イベントの発生率には、100pg/mLを基準にした場合に顕著な差が見られるとも言われています。

NT-proBNPとの関係



現在では、BNPの前駆物質であるNT-proBNPも診断に使用されています。このNT-proBNPは腎排泄に影響されるため、腎機能が低下するとその濃度が上昇します。そのため、心機能の評価においてはNT-proBNPの値を解釈する際に注意が必要です。NT-proBNPとBNPの相関関係は、NT-proBNP ≒ BNP X 7.5 -107.0（相関係数r=0.859）とされています。推定式を用いた場合、NT-proBNP ≒ BNP ^ 1.341 -15で換算可能です。

急性心不全における診断値としては、NT-proBNPが300ng/L（pg/mL）を閾値とすると、感度99%、特異度43%、PPV（陽性適中率）64%、NPV（陰性適中率）98%という数値が得られます。BNPとNT-proBNPの診断精度に有意な差はないと報告されています。

治療効果の指標としてのBNP



BNPは心不全の治療効果を評価する際にも利用されています。フランスで行われた無作為化試験「STARS-BNP」において、BNPが100ng/mL未満の患者に対し薬物治療を行った群と、指標を設けずに治療した群で比較したところ、前者の方が心不全に伴う死亡や入院のリスクがほぼ半減することが示されました。この結果からも、BNPは心不全治療の重要な指標であることがわかります。

関連項目




脳性ナトリウム利尿ペプチドは、心不全の診断と治療において非常に重要な役割を果たしており、その理解を深めることは医学において不可欠です。

もう一度検索

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。