腰巻

腰巻（こしまき）

腰巻とは、日本の安土桃山時代から江戸時代初期にかけて、主に高級武家女性が着用した夏の正装のことです。

歴史

起源

戦国時代、高級武家夫人の正装であった袿（うちき）が廃れると、武家女性は威儀を正すため、また防寒のために打掛を羽織るようになりました。しかし、夏場は打掛を羽織ることが非常に暑かったため、腰の位置で打掛を紐で結び、上半身を脱ぐという着方が生まれました。これが腰巻の始まりとされています。

高野山の塔頭・持明院にある「お市の方肖像画」に描かれている姿が、この時代の代表的な腰巻姿です。

江戸時代

江戸時代に入ると、江戸幕府によって大奥の女性の服装に規定が定められ、他の大名家もこの慣例に倣うようになりました。ただし、細川家の夫人には着用例がないなど、家によってしきたりは異なりました。腰巻は、大名家であっても相当の格式を要する女性のみが着用できたようです。

大奥における腰巻は、着用期間が旧暦5月5日から9月8日までと定められていました。地色は黒で、「提帯（さげおび）」という特殊な帯に袖を引っかけて着用しました。提帯は固織りの錦の細い帯で、全体に紙を入れて固くし、特に左右端はわらを紙で巻いた芯を入れたものでした。着装すると、芯のある部分が長く左右に張るのが特徴です。提帯は大奥や大名家で夏季に広く用いられましたが、身分の高い女性は儀式の際にこの左右に張った部分に袖をかけて着用しました。

江戸時代初期には、宮中でも腰巻が用いられていました。後水尾院の著書である『当時年中行事』の「嘉祥」の項には女官の着用が見られ、宮中の御用を勤めた雁金屋の図案集中にも腰巻の図案が見られます。しかし、幕末の宮廷行事を記した『嘉永年中行事』には見られず、宮中では早い時期に廃れたと考えられています。

衰退

江戸時代末期（幕末）になると、腰巻は特別な儀式の時のみ使われるようになり、明治時代以降は完全に廃れてしまいました。

関連項目

ロインクロス

外部リンク

織豊時代の腰巻姿
* 江戸時代後期の腰巻姿

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