腰本寿

腰本寿：和製マグローの生涯

腰本寿（こしもとひさし、1894年11月3日-1935年4月27日）は、日本野球史に輝く名選手にして名監督である。ハワイ島で日系二世として生まれた彼は、小学校卒業後、運命的な出会いを果たす。1908年、慶應義塾大学野球部のハワイ遠征に際し、マネージャーの鷲沢与四二に見出され、日本へ渡航。学費援助を受け、慶應義塾普通部から慶應義塾大学法学部政治学科を卒業する。在学中は二塁手として活躍、野球への情熱を燃やし続けた。

1916年、慶應義塾普通部野球部の監督に就任すると、第2回全国中等学校優勝野球大会で優勝という輝かしい実績を残す。その後は、大阪毎日新聞社（現・毎日新聞社）支那課に勤務しながら、大毎野球団の主将として活躍。無敵の大毎野球団を率いて数々の勝利を収め、その名を轟かせた。

慶應義塾大学野球部が早慶戦で惨敗を喫した1925年末、OBからの強い要請を受け、母校の監督に就任。1934年12月18日に病気のため引退するまで9年間、指揮を執った。この間、腰本式と呼ばれる独自の戦術と選手育成により、慶應義塾大学野球部黄金時代を築き上げた。その手腕は高く評価され、「和製マグロー」の異名をとった。

監督としての功績は計り知れない。厳しい指導と選手への深い愛情を兼ね備え、多くの才能を育成。彼の指導を受けた選手たちは、後年、日本野球界を支える中心人物となった。

1935年、大毎運動部顧問として復帰するも、同年4月27日、惜しまれつつも逝去。彼の死は、日本野球界に大きな衝撃を与えた。

1967年、野球殿堂入り。その功績は、現在も語り継がれている。

腰本寿の野球観

腰本寿の野球観は、単なる勝利への追求を超えていた。彼は、野球を通じて選手の人間形成を重視し、礼儀正しさや責任感、そしてチームワークの大切さを常に説いた。彼の指導は、技術指導にとどまらず、精神的な鍛錬にも及んだ。これは、彼が「和製マグロー」と呼ばれた所以でもあるだろう。

関連書籍

腰本寿は、自身の野球経験や考え方を記した著作も残している。代表的な著書として下記が挙げられる。

『野球』（1915年、扶桑社）
『米国遠征記』（1929年、大岡山書店）
* 『私の野球』（1931年、三省堂／復刻版：1978年、恒文社）

これらの書籍には、彼の野球人生や指導哲学が凝縮されている。現代の野球界においても、学ぶべき点が多い貴重な資料と言えるだろう。

リンゴ事件、八十川ボーク事件

腰本寿の生涯には、数々のエピソードが残されている。その中には、有名な「リンゴ事件」や「八十川ボーク事件」なども含まれる。これらの事件は、彼の野球人生において重要な出来事であり、彼の性格や指導哲学を理解する上で重要な手がかりとなる。

ベーブ・ルース「私の打撃法」翻訳

腰本寿は、ベーブ・ルースの『私の打撃法』を翻訳した実績も持つ。この翻訳は、日本の野球界に大きな影響を与えたと言われている。

まとめ

腰本寿は、選手として、監督として、そして指導者として、日本野球界に多大な貢献をした人物である。ハワイ生まれの日系二世という経歴、慶應義塾大学での活躍、そして大阪毎日新聞社での経験など、彼の生涯はドラマチックであり、現代においても学ぶべき点が多い。彼の功績は、これからも語り継がれていくことだろう。

もう一度検索