膀胱排尿筋

膀胱排尿筋（ぼうこうはいにょうきん）

概要

膀胱排尿筋（Detrusor Muscle）は、膀胱の壁に存在する主要な筋肉層であり、尿路系生理学において極めて重要な役割を担っています。この筋肉は平滑筋で構成されており、私たちの意思とは無関係に働く不随意筋です。主な機能は、膀胱に尿を効率的に貯蔵すること、そして必要に応じて膀胱を収縮させて尿を体外へ排出することです。これらの機能は、自律神経系の複雑な制御下にあります。

解剖学的特徴

膀胱排尿筋は、膀胱の壁全体を取り囲むように存在します。その筋線維は様々な方向に走っており、収縮時には膀胱全体の容積を小さくする効果があります。医学的には「排尿筋」や「膀胱平滑筋」と呼ばれることもありますが、これらはすべて同じ筋肉を指す言葉です。この筋肉の構造と機能は、膀胱が多量の尿を溜め込む際に柔軟に伸展し、排尿時には強力に収縮することを可能にしています。

生理学的機能

膀胱排尿筋の働きは、尿の貯蔵期と排尿期で大きく異なります。

蓄尿期（貯蔵）

膀胱が腎臓から送られてくる尿を溜めている間、膀胱排尿筋は弛緩した状態を保ちます。これにより膀胱は膨らみ、内部の圧力を低く保つことができます。弛緩することで、膀胱は数十ミリリットルから数百ミリリットル、場合によってはそれ以上の尿を溜めることが可能です。この弛緩は、主に交感神経の支配によって促進されます。同時に、尿が漏れ出さないように、膀胱の出口にある内尿道括約筋は収縮しています。

排尿期（排出）

尿意を感じ、排尿に適した状況になると、排尿反射が起こり、膀胱排尿筋は強力に収縮します。この収縮によって膀胱内の圧力が高まり、尿が尿道へと押し出されます。排尿筋の収縮と協調して、内尿道括約筋および外尿道括約筋（こちらは骨格筋であり随意的に制御可能）が弛緩し、尿の通り道が開かれます。この排尿期における排尿筋の収縮は、主に副交感神経の支配によって引き起こされます。

神経支配

膀胱排尿筋の活動は、自律神経系によって厳密に調節されています。

交感神経: 主に下腹神経（Hypogastric Nerve）を介して伝達されます。蓄尿期に優位に働き、膀胱排尿筋を弛緩させることで、膀胱の容量を増やすように作用します。同時に、膀胱頸部や内尿道括約筋を収縮させ、尿の漏出を防ぎます。
副交感神経: 主に骨盤内臓神経（Pelvic Splanchnic Nerves）を介して伝達されます。排尿期に優位に働き、膀胱排尿筋を収縮させることで、膀胱からの尿排出を促します。

これらの神経系の働きにより、膀胱は蓄尿と排尿という相反する機能を、身体の状態や外界の状況に応じて適切に切り替えることができるのです。

まとめ

膀胱排尿筋は、膀胱の主要な筋肉として、尿の貯蔵と排出という二つの基本的な機能を実現しています。その活動は、交感神経による弛緩と副交感神経による収縮という、自律神経系の緻密な制御によって成り立っています。この筋肉の正常な機能は、健全な尿路系の維持に不可欠であり、その機能不全は様々な排尿障害の原因となります。膀胱排尿筋となり得ます。

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