平滑筋

平滑筋とは

平滑筋は、サルコメア（筋節）が存在せず、アクチンやミオシンが少量だけ含まれている特殊な筋肉です。これは横紋筋とは異なり、無意識的な制御が行われる不随意筋に分類されます。平滑筋は、血管や膀胱、子宮などの管状または袋状の器官の「壁」に位置し、消化管内では食物を移動させる役割を果たしています。英語では「smooth muscle」と呼ばれます。

構造と機能

平滑筋の細胞は、紡錘形をしており、内部にはアクチンやミオシンが存在していますが、骨格筋や心筋のような横紋は見られません。個々の細胞の収縮メカニズムは未解明な部分が多く、主に自律神経によって支配されています。神経-筋接合部は明確でなく、神経線維の膨らみを通じて信号が伝達されます。平滑筋は、単元性平滑筋と多元性平滑筋の二つに分類されます。

単元性平滑筋

単元性平滑筋（または単ユニット平滑筋）は、数個の細胞がギャップ結合によってつながり、ひとつの細胞が神経からの信号を受け取ることで、グループ全体がほぼ同時に収縮します。このタイプの平滑筋は、交感神経と副交感神経の二重の支配を受けています。

多元性平滑筋

多元性平滑筋（または多ユニット平滑筋）は、単元性と異なり、細胞間のグループが存在せず、神経支配も一方のみに限定されます。例えば、瞳孔散大筋（瞳孔を開く）や瞳孔括約筋（瞳孔を収縮させる）は、この多元性平滑筋の例です。

血管平滑筋の重要性

血管平滑筋は血管の収縮と弛緩を通じて血管の直径を調節する重要な役割を担っています。血管の断面に沿って配置された平滑筋は、収縮により血管を細くし、抵抗を高めます。心筋とは異なり、平滑筋同士の電気的接続は弱く、ノルアドレナリンなどの情報因子に反応しながらゆっくりと収縮または弛緩する特性を持っています。

体に障害が生じた際や血液需要が高まると、血管平滑筋の収縮機能を抑えながら、平滑筋細胞の増殖や移動を促進させることで、血管の再構成が行われます。このような柔軟な表現型の切り替えは、血管の恒常性を維持するために必要不可欠です。しかし、切り替えを制御する分子メカニズムは未だ解明されておらず、研究が続けられています。また、血管平滑筋の異常な増殖は、動脈硬化や肺高血圧症などの病態形成に寄与することが知られています。

平滑筋についての理解は、医療や生物学の分野で重要な研究課題となっており、さらなる探究が期待されています。

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