臨時石炭鉱業管理法とは？意味をやさしく解説

臨時石炭鉱業管理法

臨時石炭鉱業管理法（りんじせきたんこうぎょうかんりほう、昭和22年12月20日法律第219号）は、戦後の復興期における石炭増産を喫緊の課題とする中で、日本の石炭産業を政府の管理下に置くことを定めた法律です。1947年（昭和22年）12月20日に公布されました。

制定の背景と目的

この法律は、終戦直後の深刻な石炭不足を克服し、基幹産業である石炭生産の急速な回復・増強を図るために企画されました。特に、当時政権を担っていた社会党首班の片山内閣は、重要産業の国家管理を社会主義政策の一環として位置づけており、本法もその方針のもとで推進されました。その主たる目的は、混乱する経済状況下での石炭生産を国家の管理と支援のもとで拡大することにありました。

成立過程と修正

しかしながら、炭鉱の国家管理という政府の方針に対しては、炭鉱経営者側から強い反発が巻き起こりました。彼らは、自らの経営権が侵害されることにつながる国家管理に強く反対し、これを阻止するために保守系勢力を巻き込んだ活発な政界工作を展開しました。この工作は、後に贈収賄事件である「炭鉱国管疑獄」として明るみに出るなど、当時の政治に大きな混乱をもたらしました。

このような強い反発と政界工作の結果、法案は国会での審議過程で大幅な修正を余儀なくされました。政府は炭鉱主側に配慮し、「本法は石炭増産のための緊急措置であり、ここで定められた国家管理の制度を他の産業に及ぼすものではない」とする声明を発表するなど、適用範囲の限定を強調しました。また、当初計画されていた生産現場への国家直接介入や、炭鉱自体の所有権や経営権に深く関わる条項は撤回され、あくまで経営者を通じて間接的に石炭産業を管理するという方針へと大きく転換されました。本法は、こうした大幅な修正を経て、施行後3年間の時限立法として成立することとなりました。

法律の主な内容

修正後の法律では、石炭産業に対する間接的な政府管理体制が構築されました。具体的には、中央官庁である商工省の下に石炭庁が新設され、さらに地方拠点として札幌、平（現在のいわき）、宇部、福岡といった主要な産炭地に石炭局が設けられました。商工省および各石炭局には、関係者から意見を聴取するための諮問機関が設置されました。政府は、指定した特定の炭鉱に対して、国が定めた事業計画の実施を強制できる権限を持ち、同時に、その計画遂行に必要な資材や資金の優先的な調達を保証するという形で、石炭増産を側面から支援・誘導しようとしました。

また、炭鉱の現場レベルでは、労使同数の委員から構成される生産協議会の設置が義務付けられました。この協議会は、法案提出当初は炭鉱経営における意思決定機関としての役割が期待されていましたが、経営者側の反発と法案修正の過程でその権限は大幅に縮小され、最終的には単なる諮問機関としての位置づけにとどまることとなりました。

廃止

本法は1948年4月1日から施行され、3年間の時限立法としてその効力が定められていました。しかし、成立後間もなく、芦田内閣の総辞職とそれに続く社会党の下野といった政治情勢の変化が起こりました。これにより、国家管理を推進した勢力が弱まり、本法の廃止を求める声が政府・与党内で急速に高まりました。結果として、本法は施行からわずか2年あまり、時限立法の期限満了（1951年3月末）を待たずに、1950年（昭和25年）5月20日に廃止されました。

臨時石炭鉱業管理法