臨時軍用気球研究会

臨時軍用気球研究会について

臨時軍用気球研究会（りんじぐんようききゅうけんきゅうかい）は、日本の陸海軍が設立した組織で、気球や飛行機の軍事的利用を研究することを目的としていました。この研究会は、世界的に進展する航空軍事技術を背景に、陸海軍の両方による包括的な研究を進めるために設置されました。

設立の背景と目的

1909年7月30日、勅令第207号に基づいて発足し、同年8月30日には陸海軍大臣から具体的な訓令が発せられました。研究会の活動は、遊動気球の設計や飛行機の操縦法、様々な通信手法の研究に焦点を当てており、具体的には以下の12の部門に分かれて研究が行われました：
1. 気象部: 高層気象の観測や観測器具の研究
2. 設備部: 土地買収や器具の設置に関する作業
3. 気流部: 気嚢や翼の設計、飛行の安定性についての研究
4. 構造部: 吊船の構造に関する研究
5. 材料部: 使用する素材や燃料に関する検討
6. 発動機部: 発動機の効率や構造についての研究
7. 螺旋機部: 螺旋機の設計と製作
8. 製作部: 気球と飛行機の総合的な製作
9. 航空部: 操縦法や航空地図の作成
10. 通信部: 複数の気球間及び地上との通信手法についての研究
11. 写真部: 写真偵察技術の研究
12. 名称部: 各部門の術語や名称の編纂

しかし、この研究会は専用の事務所を持たず、本格的な研究を行うための環境には不十分でした。初めは気球の研究が中心でしたが、大正時代に入ると飛行機に重点が移っていきました。

陸軍と海軍の対立

研究会は陸軍主導で運営されていましたが、海軍の意見が反映されにくく、1910年頃から海軍では独自に航空研究を行うべきとの意見が生まれました。その結果、1912年には航空術研究委員が任命され、追浜で海軍独自の研究を開始しました。この動きに対抗する形で、1915年には海軍が研究会の廃止を陸軍に提案したものの、陸軍側は存続を主張し、海軍はこれを受け入れました。最終的に実質的には1916年に海軍はこの研究会から脱退しました。

解散とその後の展開

その後、文部省は東京帝国大学内に航空研究所を設置し、研究会は陸軍の単独運営へと移行しました。1919年には陸軍航空部が設立され、1920年に田中義一陸軍大臣から研究会の廃止提案が行われ、同年5月14日に正式に解散が決定されました。

歴代の会長と委員

この研究会には数々の著名な軍人が会長や委員として関与しました。会長には長岡外史、石本新六、岡市之助などの陸軍の高官が名を連ね、委員としては東京帝国大学の教授や陸軍の技術者が参加していました。これにより、研究会は学術的な知見と実務的な経験の融合を図ることができました。

このように臨時軍用気球研究会は、日本の軍事航空技術に大きな影響を与えた組織であり、陸軍、海軍、学術界の協力のもと、多様な研究が展開された重要な歴史的機関です。

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