自主管理社会主義

自主管理社会主義

自主管理社会主義は、第二次世界大戦後にユーゴスラビア社会主義連邦共和国に導入された特異な経済政策です。この制度の特徴は、労働者が自身の意思で経営や組織運営に関与する「逆ピラミッド」型の構造を持っていることです。

制度の基本構造

自主管理制度では、経済の基幹部分が「自主管理基礎組織（OOUR）」として配置されており、具体的には職場単位で組織されます。ただし、職場規模が小さい場合などは、工場単位での組織も考慮されます。この基礎組織が最大の権力を持ち、複数の基礎組織が集まって「自主管理労働組織」を形成し、その上に「代表委員協議会」が設けられて調整作業を行います。その上位に位置するのが「自主管理連合労働組織」で、基本的に職場を基にした組織体系が築かれています。たとえば、「基礎組織」は職場に相当し、「労働組織」が工場、「連合労働組織」が会社の役割を果たしています。

ボトムアップの意思決定方式が特徴で、労働者や技術者は「労働者評議会」を形成し、自らの意見を述べて意思決定を行います。議会の運営は、選挙や直接選挙に基づき行われるため、間接的な仕組みよりも直接的な民主主義に近い形をとります。通常の大規模な組織ではこのような直接民主制は難しいため、比較的小規模な職場単位が重要だとされています。

軍事抵抗組織

特に注目すべき点は、自主管理制度のもとでほとんど全ての基礎組織に「軍事抵抗委員会」が存在していたことです。この委員会は、ユーゴスラビア独特の「トータル・ナショナル・ディフェンス」に基づく活動を行いました。具体的には、武器や食料の管理、緊急時のパルチザン動員などを担当し、動乱に備える役割を果たしました。この制度は崩壊後も変わった形で根付いています。

経営の仕組み

企業の運営においては、労働者や技術者だけでは専門的な経営が難しいため、プロの経営者が必要不可欠です。自主管理機関は、こうしたマネージャーを一般公募し、選出された経営者が企業の指揮を執ることになります。しかし、経営の最高意思決定権は自主管理組織にあり、労働者たちは間接的にその運営を監視することが可能です。この仕組みにより、労働者と経営者の間での透明な関係が築かれることが期待されました。

チトー時代とその影響

チトーの時代、この自主管理制度はユーゴスラビアの社会システムの基盤として機能していました。地域自治の組織でも自主管理の考え方が応用されていましたが、チトーの死後、セクター間の対立が表面化し、次第に制度は崩れ始めました。

自主管理社会主義は、労働者の参加を重視し、新たな経済の在り方として注目されましたが、実際の運営や社会とのバランスを取ることは簡単ではありませんでした。さまざまな要因が絡むなかで、ユーゴスラビアが直面した難題を映し出す一つの象徴とも言えるでしょう。

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