自動投球判定システム

自動投球判定システム（ABS）について

自動投球判定システム、通称ABSは、野球におけるストライク・ボールの判定を自動化するためのテクノロジーです。このシステムは、ビデオ技術やセンサー技術（例：TrackmanやHawkeye）を用いて、球の軌道を三次元で追跡し、ストライクゾーン内に入ったかどうかを正確に判定します。その主な目的は、人間の審判による誤審を減少させ、野球の試合の公平性を向上させることです。

ABSの歴史的経緯

ABSの開発は2009年に始まり、初めて導入されたのはマイナーリーグベースボール（MiLB）においてでした。最初は「QuesTec」と呼ばれるシステムが採用され、審判の判定を補助する形で使用されていました。その後、2019年には新しいバージョンが MLB にて発表され、2021年からはMiLBでの試験運用がスタートしました。2022年には、MiLBのトリプルAリーグで公式に導入され、翌年には全30の球場で使用されることになります。

韓国のKBOリーグでも2024年から完全自動化されたABSが採用されることが決定されており、これは球審がイヤホンでシステムからの判定を聞き、そのままコールする形になります。これにより、審判による判断がほぼ排除されることになります。

ABSの技術的概要

ABSは、高性能なカメラを使用して投球の軌道をリアルタイムで追跡します。2022年には「Trackman」が導入され、2023年にはより進化した「Hawkeye」が使用されました。これにより、投球の位置や速度を精密に測定できるようになっています。判定結果は、球審のイヤホンに通知され、判定をコールする形となります。

2025年にはABSチャレンジシステムが試験的に導入され、投手や捕手、打者が審判の判定に異議を唱えることができる制度が設けられます。この場合、ABSが最終的な判定を行うことになります。各チームには試合ごとに最大2回のチャレンジが与えられ、判定が覆らなかった場合はチャレンジ回数が減少します。

MLBにおける導入状況

2025年のMLBスプリングトレーニングでは、約60%の試合でABSチャレンジシステムが試験導入されます。具体的な例として、2025年2月20日のロサンゼルス・ドジャース対シカゴ・カブスの試合では、カブスの投手が成功したチャレンジによって判定がストライクに覆る場面もありました。

一方で、すでに導入したがわずか数ヶ月で撤退する事例も見られます。2022年には米独立リーグのアトランティックリーグが、自動判定を取りやめる決定を下しました。その理由は選手からの不満が高かったためです。日本のNPB（日本プロ野球）では、公式な導入は未だなされておらず、主な情報源はメディア報道や審判の経験談になります。

論争と反響

ABSの導入については賛否が分かれています。賛成派は、判定の正確性が向上し、試合の公平性が強化されると主張しています。実際、2024年のマイナーリーグでの試験では、チャレンジされた判定の51%が覆る結果が出ています。一方で、反対派は伝統的な審判の役割やゲームの流れが途切れる可能性を懸念しており、SNS上では「時間がかかりすぎる」といった声も見受けられます。

日本での今後の展望

日本においては、ABSが公式に導入される兆候は見えませんが、NHKや日刊スポーツなど多数のメディアによって取り上げられています。将来的な導入についての議論が進む可能性が高いと考えられます。松田貴士の言葉を借りれば、ABSは名捕手の定義を変える可能性を秘めているため、選手やファンに多大な影響を与えるでしょう。MLBの動向次第では、NPBや国際大会での導入も視野に入るかもしれません。

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