自動方向探知機

自動方向探知機（ADF）とは

自動方向探知機（ADF: Automatic Direction Finder）は、航空機に搭載される無線航法装置の一種です。指定した周波数の電波を発信する無指向性無線標識（NDB: Non-Directional Beacon）の方角をパイロットに指示する役割を担います。別名ラジオコンパスとも呼ばれ、無線方向探知機の一種です。主にラジオ放送を受信して放送局の方向を示すことから、この名前が付けられました。

ADFは、船舶や航空機から、適切な無線局までの相対方位を自動的かつ継続的に表示します。初期のADFは190〜535kHzの中波帯のNDBを利用していましたが、後に民間のラジオ放送局もNDBとして利用されるようになり、1700kHzの中波帯まで拡張されました。RDFユニットと同様に、ほとんどのADF受信機は中波（AM）放送局を受信できますが、ナビゲーション目的での信頼性は低いとされています。

約5度の精度しか持たないため、近年では、より精度の高い超短波全方向式無線標識（VOR: VHF Omnidirectional Range）に取って代わられつつあります。しかし、ADFは構造が単純でコストが安いため、古い航空機や船舶では依然として利用されています。

構造と原理

ADFは、指向性の強いアンテナ、真空管または半導体で動作するAM中波ラジオ、そして方位を表示するラジオマグネティックインジケーター（RMI）で構成されています。パイロットや航法士は、目的のNDBが発信する電波の周波数に合わせて受信し、放送内容を聞いて目的のNDBであるかどうかを判断します。

目的の電波を受信できれば、インジケーターの針が自動的に電波の発信源の方向を指します。電波が目的のものであるかどうかを識別するため、モールス信号でIDが送信されます。無線機の能力が向上した時代には、モールス信号のIDの後に音声でNDBの名前が告知されるようになりました。また、一般のAMラジオ放送局をNDBとして使用するようになった際には、放送局の識別のため、局名を一定間隔で告知することが義務付けられていた時期もありましたが、現在では廃止されています。

現在のラジオやテレビ番組のオープニングやエンディングで局名を告知するのは、この制度の名残と言えます。

ループアンテナ型

ループアンテナ型は、指向性の強いループアンテナを回転させ、最も電波の強い方向を探してアンテナを向ける方式です。初期のものはアンテナの回転装置と計器が機械的に連結していましたが、構造的な制約が大きいため、電気的な方式に移行しました。ループアンテナ型は、機体の中心線上の下面に出っ張ったアンテナが必要になります。

レゾルバ型

レゾルバ型は、ループアンテナ型よりも後から登場した方式で、レゾルバを使用しています。アンテナ部分を含めた装置全体が小型で、機械的な可動部分がインジケーターしかないため、小型軽量でアンテナの設置場所の制約が少ないという特徴があります。

この方式では、2本のバーアンテナをL字型に配置して固定子とし、外部からの無線電波で固定子を励起させることによって角度を検出します。2本のバーアンテナの正弦波電流をレシーバー・リゾルバーに送ると、方位が表示されます。中波帯の電波を受信するための受信機に真空管や半導体が必要ですが、角度検出自体は単純なアナログ装置によって行われています。原理的に、アンテナが2MHz以上の高い周波数帯で動作しないため、VORに使用することはできません。

無指向性無線標識（NDB）の一般的なサービス範囲

アメリカを初めとする北米では、NDBのサービス範囲は電波出力によって分類されています。

運用方法

飛行場進入

ADFは、飛行場が見える距離では役に立たないため、他の方式による誘導が必要になります。ADFの針が突然逆方向を向いた場合は、NDBを通り過ぎてしまったことを意味します。

ホーミング航法

ホーミング航法は、ADFが示す方向に進路を取り続けて飛行することでNDBに向かう航法です。風が強いほど遠回りになり、目的地への到達時間が長くなりますが、技術的には比較的簡単です。

トラッキング航法

トラッキング航法は、計器を見ながら風によって流される分を考慮してNDBに最短距離で向かう航法です。高度な技術を要します。

ラジオマグネティックインジケーター（RMI）

RMIは、ADFで得られた方位情報を表示する計器です。方位針に加えて、航空機の磁方位を表示する機能も備えています。RMIを使用することで、パイロットはより正確に自機の位置とNDBの方位を把握することができます。

参考文献

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