自動車アセスメント

自動車アセスメントとは

自動車アセスメントとは、自動車の安全性能を評価する制度です。実車を用いた衝突試験などを行い、そのデータを基に各車種の安全性を評価します。この評価結果は、消費者が安全性の高い自動車を選択するための情報として提供されるとともに、自動車メーカーに対しては、より安全な自動車の開発を促すことを目的としています。

一般的に、新車が評価の対象となりますが、評価を行う主体は様々です。行政機関がサービスとして実施するほか、自動車メーカー関連団体、自動車保険団体、消費者団体などもそれぞれ独自の評価を行っています。日本では、国土交通省が主導する自動車アセスメントが実施されています。

自動車の安全性を確保するためには、自動車自体の安全性だけでなく、道路の安全性も重要です。自動車アセスメントは、自動車自体の安全性を評価するものであり、道路の安全性は別途検証される必要があります。

世界の自動車アセスメント

世界各国で、様々な団体が自動車アセスメントを実施しています。

アメリカ：米国運輸省道路交通安全局（NHTSA）が「政府5つ星評価」として実施しており、前面衝突、側面衝突、転倒時の安全性を評価しています。また、非営利団体である米国道路安全保険協会（IIHS）も独自の衝突安全試験を実施し、結果を公表しています。

オーストラリア：オーストラリア自動車連盟（AAA）が中心となり、オーストラリアとニュージーランドの自動車クラブ、各州の道路安全局、政府機関、FIAの支援を受けて、オーストラレイシアン自動車アセスメント（ANCAP）を実施しています。

ヨーロッパ：各国の交通行政組織、自動車クラブ、保険団体が合同で評価を実施し、結果を公表しています。また、実事故の調査は、スウェーデン国有道路管理局（SNRA）や、欧州共同体（EC）が資金援助する団体であるSARACによって行われています。

アジア：中国では中国自動車技術研究センター（CATARC）、韓国では建設交通部（KMOCT）が事業を開始しており、インドでは国立自動車試験・研究開発基盤プロジェクト（NATRIP）などで検討が進められています。

日本：日本では、国土交通省が自動車アセスメント（JNCAP）を実施しています。自動車事故対策機構が評価を実施しており、前面衝突、オフセット前面衝突、側面衝突、ブレーキ性能、歩行者頭部保護性能などの試験を行っています。また、予防安全アセスメントやチャイルドシートアセスメントも公開しています。

世界NCAP会議

世界の自動車アセスメント機関（NCAP）は、相互協力のために「世界NCAP会議」を開催しています。日本では、自動車事故対策機構（NASVA）がANCAPと共催で会議を開催しました。

評価の比較と課題

衝突試験の結果は、重量が同程度の車同士でのみ比較が可能です。NCAPによる車種別の衝突安全性評価は、規定された試験条件下での結果であり、実際の事故状況とは異なる場合があります。豪州や欧州では、事故データに基づいた車種別の衝突安全性評価も行われており、NCAPとの関連性が検討されています。

日本の自動車研究所では、JNCAPの評価結果が実際の衝突安全性を反映しているか検証を行っています。しかし、自動車アセスメントの結果が消費者の自動車選択に十分に活用されているとは言えず、情報開示方法の改善が課題となっています。

また、自動車アセスメントで安全性が高いと評価された車同士でも、重量差が大きい場合は、軽い車の方が被害が大きくなることがあります。そのため、交通事故の死傷者ゼロを目指すには、自動車の安全性だけでなく、道路環境や交通システム全体を見直す必要があります。

自動車の専門家の中にも、自動車アセスメントに対して批判的な意見もあります。

まとめ

自動車アセスメントは、自動車の安全性能を評価し、消費者の車選びを支援するための重要な制度です。しかし、評価結果の解釈や情報開示方法、評価の限界など、課題も多く残されています。今後、より実態に即した評価方法の開発や、消費者への分かりやすい情報提供が求められます。

参考情報

自動車アセスメント-独立行政法人自動車事故対策機構　NASVA
国内外における情報提供状況-独立行政法人自動車事故対策機構　NASVA
NHTSA Safercar.gov
IIHS vehicle ratings
ユーロNCAP
ANCAP
K-NCAP（朝鮮語）／K-NCAP （英語版）
C-NCAP（中国語）
Latin NCAP

もう一度検索