ユーロNCAP

ユーロNCAP（European New Car Assessment Programme）とは

ユーロNCAPは、ヨーロッパで実施されている自動車の安全性を評価する第三者機関です。1997年に設立され、衝突試験や衝突予防性能試験の結果を公表することで、消費者に自動車の安全性の情報を提供し、自動車メーカーに対してより安全な自動車の開発を促すことを目的としています。

概要

ユーロNCAPは、ヨーロッパ圏内で販売されている自動車の安全性を、衝突実験と衝突予防性能試験によって評価します。試験結果は一般に公開され、消費者はこれらの情報を基に、自動車の安全性を比較検討することができます。ユーロNCAPは、世界各国で行われている同様の評価機関の中で、最も知名度が高く、権威があるとされています。

テスト対象となる車種は、年々増加傾向にあります。ヨーロッパの大手自動車メーカーの量産車種だけでなく、ヨーロッパで販売される日本車も含まれています。

評価結果は、以下の手順で公表されます。

1. テスト実施団体がテスト車種を決定
2. テスト実施
3. 試験ミスの場合やメーカーの希望がある場合、再テストを実施
4. 結果を公表

なお、メーカーの希望で再テストを行う場合は、費用はメーカーが負担します。

テスト内容

ユーロNCAPのテストは、以下の4つの観点から行われます。

乗員保護
歩行者保護
チャイルドプロテクション
安全支援機能

これらのテスト結果を基に、総合的な評価が星の数で示されます。評価基準は頻繁に変更されるため、同じ性能の車でも評価された年によって結果が異なる場合があります。また、評価基準は年々厳しくなっているため、過去に高評価を得た車でも、最新の基準では低い評価となる可能性があります。評価を比較する際には、その評価年度を考慮する必要があります。

車種は、サイズごとにカテゴリー分けされており、ボディの強度が弱い形状の車（スーパーミニやロードスターなど）は、他のカテゴリーよりも基準値が低く設定されています。

ユーロNCAPの評価は、当初は衝突実験によるパッシブセーフティのみでしたが、近年はアクティブセーフティの重要性が高まっているため、衝突予防性能の試験も追加され、評価における比重が高まっています。

自動緊急ブレーキ（AEB）評価

2013年からは、自動緊急ブレーキ（AEB）の評価が新たに導入されています。AEB評価は、低速域試験（AEB City）と高速域試験（AEB Interurban）の2項目で構成されます。

低速域試験（AEB City）：10～50km/hで走行中に、静止した対象物に対して減速する性能を評価します。
高速域試験（AEB Interurban）：静止した対象物（30～80km/h）、前走する対象物（30～80km/h）、50km/hで減速する対象物に対して、警告機能によるブレーキ作動と、システムが自動でブレーキを作動させた場合の減速性能を評価します。

評価は、Good（3～2.1点）、Adequate（2～1.1点）、Marginal（1～0.1点）の3段階で行われ、低速域試験と高速域試験でそれぞれ評価されます。AEB Cityの評価は「Adult Occupant」に、AEB Interurbanの評価は「Safety Assist」に組み込まれ、総合評価に加算されます。AEB Cityは、自動緊急ブレーキが標準装備でない場合は0点とされ、オプション装備でも減点されないIIHSやJNCAPに比べて厳しい基準となっています。自動緊急ブレーキがオプションでも装着できない車は、AEB City、AEB Interurbanともに0点となります。

2014年からは、最高評価の5つ星を得るためには、自動緊急ブレーキの搭載が必須となっています。

現在行われている自動緊急ブレーキの評価は、低速域と高速域の対車両試験のみですが、2016年からは対歩行者性能の試験も追加される予定です。

最高評価と最低評価

過去のテストでは、ボルボV40が、乗員保護、歩行者保護、チャイルドプロテクション、安全支援機能の4つの総合得点で361点という最高得点を獲得しています。また、乗員保護の得点も98点と、V40が最高となっています。

一方、最低評価としては、2006年に華晨汽車の中華・BS6が1つ星の評価を受けています。また、フィアット・プントは2018年のテストで、史上初の「星0」という評価を受けています。

カテゴリー

ユーロNCAPでは、車種は以下のようにサイズごとにカテゴリー分けされています。

スーパーミニ (例：フォード・フィエスタ、ホンダ・ジャズなど)
スモールファミリーカー (例：ヒュンダイ・i30、ホンダ・CR-Zなど)
ラージファミリーカー (例：トヨタ・アベンシス、ヒュンダイ・i40など)
エグゼクティブカー (例：メルセデス・ベンツ・Eクラス、アウディ・A6など)
ロードスター (例：マツダ・MX-5、ホンダ・S2000など)
スモールオフロード4x4 (例：マツダ・CX-5、ヒュンダイ・ix35など)
ラージオフロード4x4 (例：ヒュンダイ・サンタフェ、ランドローバー・レンジローバーなど)
スモールMPV (例：シトロエン・C4ピカソ、キア・ヴェンガなど)
ラージMPV (例：フォルクスワーゲン・シャラン、クライスラー・ボイジャーなど)
ピックアップ (例：三菱・L200、フォード・レンジャーなど)
* ビジネス&ファミリーバン (例：フォード・トランジット、ヒュンダイ・H-1など)

まとめ

ユーロNCAPは、ヨーロッパにおける自動車の安全性を評価する上で、非常に重要な役割を果たしています。その評価結果は、消費者が安全な自動車を選ぶ上で重要な指標となるだけでなく、自動車メーカーにとっても、より安全な自動車を開発するための指針となっています。

もう一度検索