自己肯定感爆上げソング

自己肯定感爆上げソングとは

「自己肯定感爆上げソング」とは、2020年代の日本のポピュラー音楽シーン、特にアイドルソングにおいて顕著な流行を見せている音楽ジャンルです。これらの楽曲は、自分自身を積極的に肯定し、褒め称える内容を特徴とし、聴く人の自己肯定感を高めることを目的としています。TikTokをはじめとするSNSで広く共有され、Z世代を中心に支持を集めています。

定義と特徴

精神科医でライターの月の人は、「自己肯定感爆上げソング」を「キャッチーな曲調で自身の存在を（主にビジュアル面で）讃え、気分を高めていく軽妙な歌詞を特徴とした楽曲」と定義しています。従来の応援ソングとは異なり、アップテンポな曲調で、歌詞の主体が自分自身に対し「かわいい」「最強」「幸せ」「大好き」といったポジティブな言葉を用いる点が特徴です。

特に「かわいい」という言葉が頻繁に用いられることから、「“かわいい”ソング」と呼ばれることもあります。これらの楽曲は、TikTokなどのショート動画サービスを中心に広まり、SNSでの共有を通じて「バズ」や「バイラルヒット」となり、Z世代を中心に支持されています。

歴史

2022年

「自己肯定感爆上げソング」に分類される楽曲が最初に登場したのは2022年です。日経MJは、このジャンルの先駆けとしてHoneyWorksの「可愛くてごめん」を挙げています。この楽曲は、サビの歌詞に合わせて投げキスや謝るポーズをするダンス動画がTikTokで拡散し、大きな話題となりました。

同年4月には、FRUITS ZIPPER|FRUITS_ZIPPERが「わたしの一番かわいいところ」をリリース。この楽曲は、「推し」を応援する気持ちを肯定する内容で、TikTokで大きな反響を呼び、MVが制作されるほどでした。

さらに、THE SUPER FRUITが「チグハグ」をリリース。この楽曲は、失敗談を語った後に曲を披露する形式の動画で人気を集め、「TikTok流行語大賞2022」を受賞しました。

2023年

FRUITS ZIPPER|FRUITS_ZIPPERは「わたしの一番かわいいところ」をCDシングルとしてリリースし、ヒットを記録。年末には、乃紫の「全方向美少女」がTikTokで先行公開され、様々な角度から顔を映す動画と共に拡散されました。

2024年

超ときめき♡宣伝部の「最上級にかわいいの!」が、特徴的な歌詞と振り付けで注目を集めました。また、CUTIE STREETがデビュー曲「かわいいだけじゃダメですか？」をリリースし、自己肯定ソングとしてヒットしました。THE SUPER FRUITは、ヒャダインが手掛けた「どーぱみんみん あどれなりんりん」で、直接的に「自己肯定感爆上げソング」をテーマとしています。

MERYの調査では、「自己肯定感爆上げ可愛いソング」が2024年のトレンドとして選ばれ、「わたしの一番かわいいところ」「NEW KAWAII」「かわいいだけじゃだめですか？」「最上級にかわいいの!」が紹介されました。

流行の時代背景

Z世代の自己肯定感

SNSの普及や多様性の尊重が進む中で、人々が他人と比較する状況が顕在化し、「自己肯定感アップエンタメ」が求められるようになりました。調査によると、Z世代の若者の多くが自己肯定感が低いと感じており、その向上を願っている傾向があります。

ショート動画の流行

TikTokなどのSNSが情報収集の手段として浸透し、短くインパクトのあるショート動画が好まれるようになりました。「可愛くてごめん」はメイクアップ動画、「チグハグ」は失敗談の披露、「わたしの一番かわいいところ」や「最上級にかわいいの!」は真似しやすい振り付けがヒットの要因となりました。

専門家による分析

専門家は、「自己肯定感爆上げソング」が若者に求められる理由として、常に他者の目線を意識せざるを得ない現代社会において、ポジティブな自己肯定感を高める楽曲が心の鎧としての役割を果たしていると分析しています。また、ヒットソングはリスナーの欲求を反映するものであり、スマホやSNSの発達が極まった時代において、「自己肯定感爆上げソング」が支持されるのは必然であると述べています。

また、女性の社会進出や男女平等の流れから自己主張が肯定されるようになり、自分らしさを表現する人が増えたことも、このジャンルの流行を後押ししていると考えられています。

まとめ

「自己肯定感爆上げソング」は、現代社会における若者の心理的なニーズに応える形で生まれた音楽ジャンルです。SNSでの拡散やキャッチーなメロディ、そして自己肯定感を高める歌詞が、多くの人々の共感を呼んでいます。今後もこのジャンルの楽曲は増え続け、多様な表現で私たちの心を支えてくれることでしょう。

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