自我心理学

自我心理学

自我心理学は、アンナ・フロイトによって創始された精神分析の一学派であり、ジークムント・フロイトの心的構造論に基づく精神分析を指すこともあります。精神分析的自我心理学とも呼ばれ、自我の防衛機制を整理したアンナ・フロイト、自我の適応機能を重視したハインツ・ハルトマン、心理―社会的発達段階を提唱したエリク・エリクソンらが代表的な研究者です。

概要

自我心理学は、フロイトの後期の思想である「抑圧するものにも注目する必要がある」という考えに基づき、自我に焦点を当てた精神分析です。フロイト自身も自我心理学と自らの精神分析を呼ぶことがあり、正統派精神分析として発展しました。しかし、「アンナ‐クライン論争」において、フロイトが娘アンナを支持したことから、情実が絡んでいたという見方もあります。

自我心理学は、無意識よりも自我の研究に重きを置き、自我の自律性、現実適応、機能、防衛、社会的行動などを幅広く扱います。自我の研究はアメリカの精神医学で学ぶことが一般的になるほど、心理学 general に受け入れられました。

批判

自我心理学は、意識をコントロールする自我の優位性を強調したため、表層的な解釈に終始しているという批判を受けてきました。無意識を重視するクライン派や対象関係論学派とは対立しています。ジャック・ラカンは、アンナ・フロイトを揶揄して「アナ・フロイディズム」（反フロイト派）と呼びましたが、これはラカンがフロイト理論の真価を無意識に関する考察に見出したためです。

統合

1950年代後半になると、神経症への投薬治療や対象関係論による境界例治療が普及し、自我心理学の地位は低下しました。しかし、現代では無意識を重視する学説や対象関係論との統合が進んでいます。オットー・カーンバーグは、自我心理学と対象関係論を統合したことで知られています。

日本では、小此木啓吾らによって1960年代から70年代初頭にかけて紹介されました。対象関係論に比べるとフロイトの精神分析を踏襲している部分が多く、ハインツ・ハルトマンやエリク・エリクソンの理論として紹介されることが多いです。自我心理学は、上記の精神分析家を指したり、フロイトの古典的な精神分析を指す言葉として使用されています。

関連人物

ジークムント・フロイト
アンナ・フロイト
ハインツ・ハルトマン
エリク・エリクソン
エディス・ジェイコブソン

関連項目

精神分析学
対象関係論
自己心理学
臨床心理学
精神医学

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