自民県政クラブ

自民県政クラブ（じみんけんせいクラブ）は、かつて茨城県議会において活動していた保守系の会派です。2002年に設立され、特定の政治家との関係性を背景に、茨城県政の中で独自の存在感を示しました。

設立の背景

この会派の設立には、当時の建設大臣を務めながら1993年のゼネコン汚職事件で逮捕され、自由民主党を離党した中村喜四郎氏が深く関わっています。中村氏は党を離れた後も、2000年の第42回衆議院議員総選挙に無所属で立候補し当選を果たしました。自民県政クラブは、この中村氏を地元茨城で支えていた自由民主党所属の県議会議員たちが結成した組織であり、彼への支援を目的として発足しました。これは、党籍を失った有力政治家を、出身政党の地方組織内の議員が支援するという、異例の政治構造を生み出しました。

活動と勢力拡大

設立後、自民県政クラブは茨城県議会内で活動を展開しました。特に2006年 12月10日に実施された茨城県議会議員選挙では、5議席を獲得し、会派として一定の勢力を確立しました。この選挙において、会派は古河市、結城市、当時の水海道市（現在の常総市）、旧北相馬郡（利根町、旧藤代町）、旧筑波郡（つくばみらい市）といった地域に無所属候補を擁立する戦略をとりました。水海道市では候補者が無投票で当選しましたが、それ以外の選挙区では自由民主党が独自の候補、いわゆる「刺客候補」を立てて対抗しました。しかし、筑波郡選挙区を除き、自民県政クラブが擁立または支援した現職候補が次々と当選を果たしました。この結果は、中村喜四郎氏の地元である茨城7区を含む県西地域を中心に、会派が強い支持基盤を持っていることを明確に示しました。

選挙後の議員の動向

2006年の県議選後、会派の所属議員にはいくつかの動きがありました。北相馬郡選挙区で当選していた川口三郎氏は病気のため死去し、その後の補欠選挙では自民党候補が議席を得ました。また、水海道市選挙区で無投票当選を果たしていた長谷川典子氏は、常総市の市長選挙に挑戦し、当選して転身しました。

中村氏との関係変化と会派の衰退

会派設立の契機となった中村喜四郎氏との関係は、時とともに変化しました。2014年の茨城県議会議員選挙あたりから、中村氏は自民県政クラブの候補者に対する目立った応援行動を控えるようになり、会派から次第に距離を置く姿勢を見せ始めました。さらに、中村氏は2018年には国会において、民進党系の「無所属の会」に入会するなど、自身の政治スタンスを野党色へと転換させていきました。この中村氏の政治的立ち位置の変化は、彼を支えるために結成された自民県政クラブにも影響を与えました。

2018年の茨城県議会議員選挙では、中村喜四郎氏の長男である中村勇太氏が無所属候補として古河市選挙区（定数3）から立候補しました。この選挙区は、長年にわたり中村喜四郎氏を支えてきた自民県政クラブ所属の江田隆記氏の地盤でした。結果的に、父子に近い関係の候補者同士が票を分け合う形となり、中村勇太氏が当選する一方で、江田氏は落選しました。当選した勇太氏は自民県政クラブには所属せず無所属にとどまったため、会派の議席数は5から4に減少しました。この選挙で、中村喜四郎氏が同選挙区で落選した日本共産党の候補者に応援の色紙を送っていたことも、彼が会派からさらに距離を置いている状況を示唆する出来事でした。

議員の離脱と会派の消滅

会派の勢力はその後も縮小が続きました。2019年8月には、当時4名だった自民県政クラブ所属議員のうち、2名が会派からの退会を選択しました。退会した半村登氏（坂東市・五霞町・境町選挙区）は同年8月23日に、川口政弥氏（取手市選挙区）は2020年 4月21日に、それぞれ茨城県議会における「いばらき自民党」の会派に加わりました。

そして、2020年 6月2日、会派に所属していた飯田智男氏が常総市長選挙への立候補に伴い、県議会議員を辞職しました。これにより、自民県政クラブに所属する議員は要件とされる複数名を下回り1名となったため、議会規則に基づき会派としての活動を維持できなくなり、事実上、会派は消滅しました。

その後の動向

会派消滅時に唯一所属していた臼井平八郎氏は無所属となりましたが、2021年2月10日には「いばらき自民党」に入会しました。また、2021年8月27日の茨城県議会補欠選挙（常総市選挙区）で無投票当選し、県議会議員に復帰した飯田智男氏も、「いばらき自民党」の会派に加わっています。このように、自民県政クラブに属した議員の多くは、最終的に自民党系の会派へと戻る形となりました。

自民県政クラブは、中村喜四郎氏という特定の政治家を支援するという背景のもとに結成され、一時は茨城県議会で独自の勢力を形成しました。しかし、中村氏との関係性の変化や所属議員の減少、他の会派への移籍などを経て、およそ18年間の歴史に幕を閉じました。

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