自治型社会

自治型社会とは

自治型社会とは、地域社会の課題に対し、住民コミュニティ自身が主体的に解決に取り組む社会を指します。この社会では、自治体やNPOなどの組織と協働しながら、地域の問題解決を目指します。従来の行政主導の社会から、住民が主体的に関わる社会へと移行することで、より柔軟で地域の実情に合った解決策が生まれることが期待されています。

自治型社会の背景

自治型社会の形成には、地方分権の推進が深く関わっています。地方分権とは、国が持っていた権限を地方自治体に移譲し、各地域が自らの意思で政策を決定・実行できるようにする取り組みです。この背景には、以下の様な考え方があります。

地方自治の本旨の具現化: 憲法で保障された地方自治の理念を具体化し、住民自治を促進する。
行政改革の流れ: 「国から地方へ」「官から民へ」という流れの中で、地方自治体が担う公共的役割を再定義し、中央集権的な体制から地方分権的な体制へと移行する。
大規模災害からの教訓: 阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件などの大規模な災害や事件が発生した際、地方自治体だけでは地域社会の課題を解決しきれないという問題点が浮き彫りになった。この経験から、地方自治体への権限委譲を求める議論が活発化した。

分権改革の歴史

日本の分権改革は、主に二つの段階を経て進められてきました。

第一次分権改革（1995年～2001年）

1995年に制定された「地方分権推進法」を皮切りに、第一次分権改革がスタートしました。この改革では、以下の点が大きな変化として挙げられます。

機関委任事務の廃止: 国が政策を立案し、地方自治体が国の下請けとして実行するという体制が廃止されました。
地方分権一括法の制定: 475もの法律を束ねた「地方分権一括法」が制定され、国と地方自治体の関係が上下関係から対等な関係へと変化しました。これにより、権限委譲から権限移譲へと変化し、地方自治体の自主性が尊重されるようになりました。

第二次分権改革（2009年～2010年）

2006年には「地方分権改革推進法」が成立し、第二次分権改革が始まりました。この改革では、以下の6つの課題が中心に議論されました。

1. 国と地方の役割分担の見直し
2. 地方自治体の財政基盤強化
3. 住民自治の推進
4. 地方議会の活性化
5. 広域連携の推進
6. 地方分権改革の継続的な推進

分権改革のポイント

分権改革を進める上で、以下の点が重要なポイントとなります。

三位一体改革: 国の財源を地方に移譲し、地方交付税の仕組みを改革すること。
合併推進: 市町村の合併を推進し、行政効率を高める。将来的には道州制の導入も検討されている。
地方政府の確立: 地方自治体は、自治行政権、自治立法権、自治財政権の確立を目指し、より自立した運営を行う必要がある。
条例制定権の拡大: 地方自治体が、より柔軟に地域の実情に合った条例を制定できるようにすること。
基礎自治体の優先: 市町村などの基礎自治体を重視し、地域住民のニーズにきめ細かく対応できるようにすること。

自治型社会の実現に向けて

自治型社会の実現には、地方自治体への権限移譲だけではなく、地域住民、NPO、自治体などが協力し、ネットワークを構築することが不可欠です。また、中央政府も地方自治体の取り組みをサポートする必要があります。現状では、単に権限を移譲するだけにとどまっている部分もあるため、今後は、地域の実情を考慮し、課題解決に繋がるような権限移譲が求められます。

参考文献

現代日本の地方自治（今村都南雄）
ホーンブック・地方自治（礒崎初仁）
変貌する自治の現場・新しい自治がつくる地域社会（大石田 久宗）
地方分権条例制定の要点―自治体の対応とモデル条例（宇賀克也）

関連項目

地域コミュニティ
コミュニティ・ビジネス

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