自然資本

自然資本の概念と重要性

自然資本（しぜんしほん、英語:natural capital）は、経済学における資本の概念を自然界に広げたものです。具体的には、我々の生活に必要な資源を生産する基盤として機能する自然環境やその資源を指します。これには、森林、山、海、川、大気、土壌、さらにはそれらの生態系を構成する生物が含まれ、広く言えば生物圏全体を自然資本と捉えることができます。

この自然資本は、将来にわたって利用可能な商品やサービスを生み出す「ストック」として定義されており、その経済的価値は年平均で約33兆ドルとも言われています。これにより、自然資本の適切な管理と持続可能な利用が重要性を増しています。

自然資本の分類と生態系サービス

自然資本は、社会資本や人的資本と並んで独立した分類にされることがありますが、位置付けには明確な合意はありません。また、自然資本と生態系サービスを混同することがしばしばありますが、重要なのは、自然資本がストックであるのに対し、生態系サービスは時間と共に生成されるフローである点です。

例えば、森林や魚群は自然資本の一部として扱われますが、これらの生物は自ら繁殖し成長することにより維持されるストックです。一方、森林伐採によって得られる木材や漁獲した魚は、自然資本が提供するサービスの結果として生じるもので、フローに相当します。

過剰利用の懸念と持続可能な管理

最近の環境報告書、例えばミレニアム生態系評価や生きている地球レポートなどでは、自然資本の過剰利用による損失や劣化が懸念されています。過伐採や資源の乱獲は、長期的な視点から見ると自然資本に対する著しい脅威となり得ます。持続可能な開発の観点から、自然資本を守るための戦略が必要です。

外部不経済と政策転換

自然資本の問題は、外部不経済とも密接に関連しています。例えば、化石燃料を消費する企業が環境への負担を余りにも軽視していることは、企業活動の結果として生じる環境コストを社会全体で負担させられることに繋がります。また、漁業資源の乱獲はコモンズの悲劇として良く知られており、資源の持続可能な管理が必要です。

このような現状に対処するためには、政府の政策が重要です。ミレニアム生態系評価では、過剰な助成金や補助金の廃止、カーボン税や排出枠制度の導入など、さまざまな政策転換が提案されています。これらの取り組みにより、自然資本を守り、持続可能な社会を構築するためのステップとなります。

結論

私たちが生活している現代社会において、自然資本は経済活動の基盤として極めて重要です。その価値を正しく認識し、持続的に利用するためには、適切な管理と政策が不可欠です。自然資本の持続可能な利用は、私たちの未来に直接関わる問題であり、共に考え、行動することが求められています。

もう一度検索