自由の代償

映画『自由の代償』の紹介

『自由の代償』（じゆうのだいしょう、原題: Faustrecht der Freiheit）は、1975年に公開されたドイツの映画で、ニュー・ジャーマン・シネマを代表する監督ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーが手がけた作品です。英語圏では『Fox and His Friends』というタイトルでも知られています。日本ではファスビンダーの傑作選2024での邦題が『自由の暴力』に変更されています。

あらすじ

本作は、異なる階級間に生じる悲劇を描きながら、同性愛をテーマにしたフランツという男性の恋愛とその波乱を中心に展開します。フランツは見世物小屋で働く労働者階級の同性愛者で、恋人のクラウスが逮捕されたことにより、突然失業してしまいます。以降、富裕層のゲイである骨董商マックスと出会うものの、マックスはフランツに対して冷淡で、小銭すら恵んでくれません。

失意の中、フランツは何とか手に入れた小銭で宝くじを購入し、大金を当てることに成功します。このお金を使い、彼はマックスの主催するゲイ・パーティで工場経営者の息子オイゲンと出会います。オイゲンは最初はフランツに無関心ですが、フランツが持つお金の存在に気づくと態度が一変し、彼に近づいてきます。

フランツはオイゲンに夢中となり、愛を深めるために新車や豪華な家具、旅行をプレゼントし、さらにはオイゲンの父親の会社にも投資を行います。しかし、オイゲンは次第にフランツの背景や文化的教養に対して失望し、心が離れていきます。最終的にオイゲンはフランツをアパートから追い出す事態になり、フランツは孤独と絶望の中で病に倒れます。

物語のクライマックスでは、地下鉄の駅で死んでいるフランツが発見され、横には睡眠薬の瓶が転がっているシーンが描かれます。この時、偶然通りかかったクラウスとマックスは、フランツの死を見て見ぬふりをし、その場から立ち去っていくのです。

制作情報

本作は1974年の春と夏に、ドイツのミュンヘンとモロッコのマラケシュで21日間にわたり撮影されました。その制作年は「1974年/1975年」と記載されることも多いです。ファスビンダー自身が主役を演じることから、彼の同性愛の面が直接的に描かれる最初の映画でもあります。映画には「アルミンをはじめとして他のすべての人たちに」との献辞が添えられています。

評価

本作は、恋愛劇の背後に資本主義社会における冷酷な労働者の搾取を描写していると評されており、アメリカの『ヴィレッジ・ヴォイス』が行った投票でも「20世紀のベスト映画100」にて第82位にランクインしています。ファスビンダーの映画は、単なる個人の物語を超えて、より深い社会的なテーマを掘り下げています。

この映画を通して、観客は人間関係や社会制度における力関係、倫理的な選択の難しさを考えさせられることでしょう。

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