自由貨幣

自由貨幣

自由貨幣は、シルビオ・ゲゼルが提唱した通貨制度であり、別名、中立貨幣または減価する貨幣とも呼ばれます。ゲゼルの代表作『自然的経済秩序』で提案されました。

概要

通常の貨幣は、インフレがない場合、時間経過による価値の減少がありません。これは、財やサービスが時間とともに劣化するのとは対照的です。そのため、貨幣を融資する際に金利が発生し、多額の通貨を保有する者が金利収入で生活できる一方、債務者は金利負担を強いられるという富の格差が拡大する要因となります。また、利息に見合う利益が出ない事業への投資が進まないという問題も生じます。

ゲゼルは、この問題を解決するために、徐々に価値が下がる通貨の導入を提案しました。具体的な方法として、スタンプ貨幣が考案されました。これは、一定期間ごとに額面の一定割合のスタンプを購入して貼ることを義務付けるものです。1930年代には、オーストリアのヴェルグルやドイツのシュヴァーネンキルヒェンなどで地域通貨として流通した実績があります。

スタンプ貨幣は煩雑なため、現在では電子マネーとして自由貨幣を導入する事例も見られます（ドイツのキームガウアー、フランスのSOLなど）。電子マネー化により、減価手続きが簡略化され、銀行預金の利息と同様に、一定額が定期的に減価されるようになります。

自由貨幣は、緩やかなインフレを人工的に引き起こすように見えますが、インフレとは異なります。インフレは、貨幣価値に対する財やサービスの全面的高騰を意味しますが、貨幣の減価は貨幣保有者にのみ影響します。減価する貨幣において100円が90円に減価しても、財やサービスの価格は変動しません。一方、インフレは財やサービスそのものの価格を変動させ、将来の賃金など、現在所有していない貨幣の価値も減少させます。

利点と欠点

自由貨幣は、デフレを防ぎ、消費を活性化させる効果があると言われています。しかし、貯蓄意欲を減退させるという欠点も指摘されています。

また、融資が減少し、新規事業が立ち上げにくくなるという意見もありますが、減価する貨幣を溜め込んでも損をするため、むしろ融資が活性化されるという反論もあります。

批判

ケインズは、ゲゼルの考えおよび自由貨幣について、一定の評価を与えつつも、『雇用・利子および貨幣の一般理論』において批判的な見解を示しています。

関連項目

地域通貨
デジタル通貨
マイナス金利

外部リンク

自然的経済秩序（日本語訳）
* 補完通貨研究所

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